2010 Fiscal Year Annual Research Report
インスリン受容体細胞外ドメイン切断とその臨床的意義の解明
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22790317
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
湯浅 智之 徳島大学, 疾患酵素学研究センター, 准教授 (50304556)
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Keywords | 可溶性インスリン受容体 / インスリン抵抗性 |
Research Abstract |
ヒト血中には細胞膜上のインスリン受容体由来と考えられる可溶性インスリン受容体(sIR)が存在し、糖尿病患者で有意に増加している。sIRはインスリン結合部位であるαサブユニットを有しており血中のインスリンと結合しインスリン作用を減弱していると考えられ、多様な因子により構成されるインスリン抵抗性の一端を担っている可能性がある。sIRとインスリン抵抗性との関係を明らかにするため、薬物未治療2型糖尿病118例の解析を行った。血中sIR値とインスリン抵抗性(HOMA-IR)を検討したところ有意な正の相関を認めた(r=0.27,P=0.0031)。一方でHOMA指標にはその精度に限界が指摘されている。インスリンクランプ法はインスリン抵抗性を最も正確に評価する方法論として確立しているため、今後インスリンクランプ法によるインスリン抵抗性の評価とsIR値の関連について検討を進めていく。sIRが血中のインスリンと結合しインスリン作用を減弱しているとするとその正確な定量は糖代謝を考える上でも重要である。sIRに結合する極微量のインスリンを定量するため、これまでの測定感度をさらに高めた超高感度インスリン測定系を開発した。次に、培養液中にsIRを検出する特定の細胞株を用いてsIR産生in vitro系の構築を行った。この細胞株におけるsIR産生量は高グルコース処置時間およびグルコース濃度に依存して増加した。また、高グルコース処置により亢進したsIR産生能は低グルコース置換により抑制された。インスリン受容体発現量はグルコース濃度により増減したが、培養液中sIR量の増加はこれのみには依存しなかった。これらの結果は、ヒト糖尿病患者において血糖値依存的に血中sIR量が変動する事象をin vitro系で再現していると考えられる。本系の構築によりインスリン受容体が切断遊離し高グルコース下に促進する分子機構の解明が可能となった。
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