2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22790369
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
長尾 香里 独立行政法人国立循環器病研究センター, 細胞生物学部, 流動研究員 (20455546)
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Keywords | CD82 / HIF-2 / 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
HIFは低酸素環境下で生体内に引き起こされる遺伝子発現を制御する転写因子である。血管内皮細胞にはHIF-1とHIF-2の2種類が存在しており、各々制御する遺伝子に違いがあることが知られている。HIF-2は血管の成熟化に重要な役割を果たしていることが示唆されているが、詳細は明らかではない。そこで血管内皮細胞においてHIF-2特異的に誘導される分子の検索を行い、CD82を同定した。CD82の血管内皮細胞における発現は報告があるが、転写制御についてはあまり報告がない。レポータージーンアッセイとChIPアッセイにより、CD82はイントロン1に存在するHREを介してHIF-2に転写制御されることが明らかとなった。HIF-2によるCD82の転写制御機構は新しい報告である。 CD82の発現上昇が血管内皮細胞の挙動にどのような変化を及ぼすのか、細胞が受け取るシグナル伝達がCD82によって調節されているのか、CD82強制発現を行って検討した。CD82はテトラスパニンファミリーに属する分子であり、上皮細胞では増殖因子刺激によるシグナル伝達やインテグリンによる基質への接着、カドヘリンによる細胞間接着を調整しているとの報告がある。CD82強制発現した血管内皮細胞においてスクラッチアッセイを行ったところ細胞シートの移動の抑制が認められたことから、細胞増殖抑制、細胞間接着の強化、細胞-基質間接着強固の3つの可能性が考えられた。最初に細胞増殖について検肘したが、差は認められなかった。次に細胞間接着のない状態で、個々の細胞移動度についてタイムラプスイメージングを行った解析の結果、細胞間接着によらず個々の細胞運動自体が抑制されることが明らかになった。 新生血管が構築されるまでの過程、すなわち血管新生の開始時から血管形成完了までの間の血管内皮細胞の動きは細胞膜上の分子と細胞外マトリクスとの相互作用によって調整されている。血管内皮細胞におけるCD82がその調節機能の一端を担っていることが予想される。今後は細胞-基質間接着の調節におけるCD82の関与と、CD82トランスジェニックマウスを用いたin vivoでの血管新生調節について検討を行いたい。
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