2011 Fiscal Year Annual Research Report
重層扁平上皮の増殖、分化、がん化におけるTHG-1の役割
Project/Area Number |
22790374
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 裕之 筑波大学, 医学医療系, 助教 (70375509)
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Keywords | Tsc-22 / THG-1 / 扁平上皮がん / EGF / がん遺伝子 |
Research Abstract |
扁平上皮は皮膚や食道に認められ、上皮細胞が3次元的に多層化して構成される組織で、様々なストレスから体を守るバリアとして働いている。その構成細胞は常に更新され、絶妙なバランスで一定の細胞数を維持することで恒常性が保たれている。構成細胞は基底層(Basal layer)に存在する幹細胞が非対称分裂を行うことで供給され、表層(suprabasal layer)に移動するに伴い増殖を止めて分化する。また近年がんの発生には、その幹細胞に変異が蓄積し、がん幹細胞が発生することが重要であると考えられている。特に扁平上皮由来のがんは扁平上皮がんと呼ばれ、皮膚、食道、肺等に認められる予後不良のがんである。しかしどのようにして、がん幹細胞の発生、がんの発症、及び悪性化へ導かれるのかは不明である。申請者はTsc-22ファミリータンパク質の一つであるTHG-1(Tsc22D4)の機能を解析する過程で、THG-1が皮膚、食道などの扁平上皮の基底層に発現することを見出した。基底層には幹細胞が存在し、がん化と密接に関わることから、食道、肺、子宮頸がんの組織アレイを用いて、THG-1の発現について検討したところ、扁平上皮がんの大部分にTHG-1が高発現することを見出した。そこで皮膚角化細胞株にTHG-1を発現させたところ、EGFによる増殖、運動性の亢進、がん細胞様の形態変化、及び分化抑制が認められた。次に食道がん細胞でTHG-1をノックダウンすると、がん細胞の増殖、浸潤、腫瘍形成能が低下することを見出した。またTHG-1はEGF-Ras-ERK経路によってリン酸化され、現在までに複数のリン酸化部位を見いだしている。さらに扁平上皮がんにおいてTHG-1遺伝子を解析したところ、一部でアミノ酸置換を伴う変異が存在することが明らかになった。さらにその変異体は正常型に比べて、EGFによる増殖促進能を亢進させることを見出している。以上よりTHG-1は、扁平上皮がんの新規がん遺伝子として機能することが示唆された。さらに現在THG-1ノックアウトマウスを作製し、THG-1の生理的な役割について解析を進めている。
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Research Products
(3 results)