2010 Fiscal Year Annual Research Report
心肥大・心不全におけるDA-Rafの生理機能とその作用機序の解明
Project/Area Number |
22790688
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
高野 晴子 千葉大学, バイオメディカル研究センター, 機関研究員 (40532891)
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Keywords | 発生・分化 / シグナル伝達 / 循環器・高血圧 / 細胞・組織 / 心肥大 / 肺胞形成 / ノックアウトマウス / Ras-ERKカスケード |
Research Abstract |
申請者のグループが発見したDA-Raf (Deleted A-Raf)はA-Rafのスプライシングアイソフォームであり、Ras-ERKカスケードの負の調節因子である。DA-Rafの生理機能を明らかにするために申請者が作製したノックアウト(KO)マウスは、脳や心臓、肺で発生異常を呈し生後一ヶ月で死に至る。本研究はDA-Rafの生理機能を個体レベルで明らかにすると共に、DA-Rafの作用機序を解明することを目的としている。まず、成体マウス心臓を解析モデルとするため、129系統への遺伝的背景の変換を行った。これにより、KOマウスの致死性は回避されたが、成体KOマウスにおいて顕著な心肥大は認められなかった。この原因として、DA-Raf KOマウスでは肺気腫に起因する心肥大が誘導される可能性が示唆された。そこで、KOマウスにおける肺気腫の原因を明らかにするために組織学的解析を行うと、KOマウスの肺胞では筋線維芽細胞が顕著に減少し、このために肺胞隔壁の形成が抑制されることが明らかになった。一方、in situ hybridization法を用いた解析から、DA-RafはII型肺胞上皮細胞に高発現していることが明らかになった。また、KOマウスのII型肺胞上皮細胞ではRasの下流因子であるMEKの高リン酸化が検出された。さらに、培養II型肺胞上皮細胞においてDA-RafをノックダウンするとTGF-β1により誘導される筋線維芽細胞への分化が抑制された。以上のことから、DA-RafはRas-ERKカスケードを抑制することにより、II型肺胞上皮細胞から筋線維芽細胞への分化を促進し、肺胞の成熟に必要不可欠な役割を果たしていることが明らかになった。
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