2011 Fiscal Year Annual Research Report
高病原性鳥インフルエンザH5N1のヘマグルチニン蛋白質による病原性発現機構の解明
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22790953
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大道寺 智 大阪大学, 微生物病研究所, 特任助教 (80432433)
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Keywords | 高病原性鳥インフルエンザ |
Research Abstract |
前年度までの研究でヒトに病原性を示さないA/Duck/Hong Kong/820/80(H5N3)に対してH5N1ウイルスのHA遺伝子を導入したrecombinant H5N3H5N1HA (rH5N3H5N1HA)では親株のA/Duck/Hong Kong/820/80(H5N3)と比較して死亡率は優位に上昇し、肺でのウイルス増殖量も約10倍程度高いことがわかった。そしてそのことからH5N1ウイルスはHA蛋白質に起因してマウスに病原性を示すことがわかった。 本年はその病原性を病理組織学的に評価するために、上記ウイルス感染マウス肺の組織傷害を病理組織学的に評価した。その結果、上記の結果同様にA/Crow/Kyoto/53/2004(H5N1)およびrH5N3H5N1HAを感染させたマウスでは強い細胞傷害と炎症細胞の浸潤、出血が認められた一方でA/Duck/Hong Kong/820/80(H5N3)では軽度であった。さらに病理組織の結果で観察された炎症反応についてより詳細に検討するため、ウイルス感染後の血中炎症性サイトカイン濃度をELISAで評価した。その結果、血中の炎症性サイトカインに関してはrH5N3H5N1HA感染マウスにおいてA/Duck/Hong Kong/820/80(H5N3)感染マウスの値と比較して高かったもののA/Crow/Kyoto/53/2004(H5N1)感染マウスの値は必ずしも高いとは言えなかった。これらの結果より、高病原性鳥インフルエンザH5N1ウイルスの病原性に関してウイルス側の因子としては昨年度に得られた結果同様にHA蛋白質が関与していると考えられ、宿主側の直接の死因としては組織で起きている炎症と出血が原因と考えられた。しかし一方で血中の炎症性サイトカイン濃度に関してはA/Crow/Kyoto/53/2004(H5N1)感染マウスでは病理組織で炎症像が認められる感染6日後の段階においても必ずしも高いレベルとは言えず、その点に関しては一点のみならず感染後様々な時間帯で評価する等、さらに検討の余地がある。 以上の結果は細胞を用いたin vitroの実験系においてH5N1ウイルスのHAが強い細胞傷害を誘導する当研究室で以前までに得られた結果(Daidoji et al., 2008)と一致しており、動物実験系においてもH5N1のHA蛋白質はH5N1ウイルスが哺乳動物で病原性を示すのに重要な役割をしていると考えられた。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Frequency of D222G and Q223R hemagglutinin mutants of pandemic (H1N1) 2009 influenza virus in Japan between 2009 and 20102012
Author(s)
Yasugi M, Nakamura S, Daidoji T, Kawashita N, Ramadhany R, Yang CS, Yasunaga T, Iida T, Horii T, Ikuta K, Takahashi K, Nakaya T
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Journal Title
PLoS One
Volume: 7
Pages: e30946
DOI
Peer Reviewed
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