2010 Fiscal Year Annual Research Report
プリオン仮説は本当か?:宿主自然免疫機構から探る真の病原体
Project/Area Number |
22790955
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
石橋 大輔 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10432973)
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Keywords | プリオン / 自然免疫 / IRF3 |
Research Abstract |
プリオン病はヒトを含む各種動物に見られる空砲変性及びグリオーシスなどの脳内病理変化を伴う難治性の中枢神経変性疾患である。これまで病原体(プリオン)は、正常型プリオン蛋白質(PrP)の構造変換によって作られる異常型プリオン蛋白質と推測されているが確定はしていない(プリオン仮説)。プリオン感染と自然免疫シグナルカスケードとの関連性を明らかにするために、本年度では以下の検討を行った。プリオン持続感染細胞と非感染細胞との間における自然免疫関連因子発現の差異についてリアルタイムPCR法を用いてプリオン持続感染細胞に特徴的な自然免疫関連因子の探索を行った結果、ウイルス由来のdsRNAに対し働くMyD88非依存のシグナルカスケードの代表的な因子であるRIG-I、TLR3、IRF3その下流の因子IFNbetaなどに有意な発現減少が確認された。さらにプリオン持続感染・非感染細胞ライセートのiTRAQラベルによるLC/MSMSの解析によりTLR4の発現の差違が確認された。これらの結果は、プリオン感染が自然免疫機構に何らかの関与を示しているものであり、特に、MyD88非依存シグナルカスケードの因子がターゲットとなっていると示唆される。さらに、プリオン持続感染細胞へのIRF3の強制発現により、異常型プリオン蛋白質の発現抑制が見られ、一方IRF3siRNAを用いた検討により、異常型プリオン蛋白質の発現増加も確認された。これらの結果より、MyD88非依存シグナルカスケードの因子の中でもIRF3が重要な役割を担っていると考えられる。今日まで否定的であった「プリオン感染ではIFN systemは惹起されない」定説に異を唱えるものであり。プリオン感染に異常型プリオン蛋白以外の未知のウイルスなどの他の因子がプリオン感染に影響を及ぼしている可能性を提起するものである。今後、このシグナルカスケードとプリオン感染との因果関係を明らかにすることにより、この系を賦活化させる化合物などを探索し、実用化に向けた治療薬および予防薬の開発を目指す。
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Research Products
(6 results)