2011 Fiscal Year Annual Research Report
1型糖尿病発症と母体環境および母体栄養の関連性について
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22791012
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Research Institution | The University of Shimane Junior College |
Principal Investigator |
籠橋 有紀子 島根県立大学短期大学部, 健康栄養学科, 准教授 (30369756)
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Keywords | 1型糖尿病 / 膵島炎 / 必須脂肪酸 / 胎生期 |
Research Abstract |
【目的】1型糖尿病は、遺伝的素因を持ったヒトに何らかの環境因子が作用することにより発症する自己免疫疾患で、インスリンを分泌する膵島β細胞が破壊されること(膵島炎)によって起こる。本研究では、母体を通じて摂取する必須脂肪酸比率(n-6/n-3)の違いおよび母体の摂取期間が、1型糖尿病発症率及び膵島炎の進行に与える影響について、モデル動物のNon-Obese Diabetic mice(NOD)マウスを用いて解析を行った。【方法】必須脂肪酸比率の異なる食餌(n-6/n-3:高n-3食<n-3食<通常食<低n-3食)を、母体の妊娠前から摂取させ、その仔にも継続して摂取させ、仔の1型糖尿病発症率および膵島炎の進行程度を組織病理学的に解析した。また、妊娠確認後10.5日目において、マウス用通常食からn-3食に変更して1型糖尿病発症率および膵島炎の進行程度についても同様に検討した。 【結果・考察】生後6週齢におけるNODマウスの膵島炎の進行は、n-3食、低n-3食、通常食、高n-3食を摂取した群の順に抑制されたが、1型糖尿病発症率は、n-3食、高n-3食、通常食、低n-3食を摂取した群の順に抑制されており、膵島炎の進行程度と1型糖尿病発症率とは一致しない結果となった。以上より、1型糖尿病発症および膵島炎の進行程度に必須脂肪酸比率が関与する可能性が考えられるが、膵島に浸潤するリンパ球の種類などに違いが生じ、1型糖尿病発症および膵島炎の進行程度が一致しなかった可能性が示唆された。また、妊娠確認後10.5日目で通常食からn-3食の食餌に替えた群においても、妊娠前からn-3食を摂取するのと同様に膵島炎の抑制がみられた。しかしながら、1型糖尿病発症率は妊娠前からn-3食を摂取する群と比較して抑制されなかった。【結論】自己免疫疾患の一つである1型糖尿病のモデル動物であるNODマウスの病態進行過程に食餌中の必須脂肪酸比率および摂取時期・期間が関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
妊娠期の母体環境および母体栄養が1型糖尿病に及ぼす影響について、まず、必須脂肪酸に着目した母体栄養について検討を進めた結果、詳細なメカニズムについては鋭意検討中であるが、1型糖尿病発症率を抑制するために適正な必須脂肪酸比率が存在するという知見が得られた。また、望ましい摂取期間および時期についての新たな知見が得られた。この成果をもとに、妊娠期の母体環境についての検討を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
妊娠期の母体環境および母体栄養が1型糖尿病に及ぼす影響のなかで、必須脂肪酸比率に着目した母体栄養の摂取期間について知見が得られた。この成果をもとに、妊娠期の母体環境の変化、妊娠初期の栄養もしくはその他の要因について詳細に検討を進めていく予定である。
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