2011 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚虚血再潅流傷害マウスモデルを用いた褥瘡予防療法の検討
Project/Area Number |
22791062
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
齋藤 佑希 金沢大学, 医学系, 助教 (90547168)
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Keywords | 虚血再潅流 / 褥瘡 / TNF-α / 1400W / iNOS / 接着分子 |
Research Abstract |
本年度は、ICAM-1およびL-selectinをノックアウトしたマウス(L/I^<-/->)を用い、皮膚虚血再還流傷害を検討したほか、抗TNF-α抗体および1400Wを用いて検討を行った。 L/I^<-/->では、皮膚傷害の軽減が期待されたが、野生型マウスよりわずかに軽減した程度であり有意なものではなかった。従って、皮膚虚血再潅流傷害における炎症細胞浸潤は、複数の接着分子が段階的に作用するのではなく、その作用を補完しながら細胞を浸潤させている。効果を高めるためには複数の接着分子を同時に抑制する必要があり、その場合細胞浸潤が強く抑制され、むしろ治癒が遷延するため、臨床応用は困難と考えられた。 一方、抗TNF-α抗体および1400Wは全身投与において野生型マウスと比較し有意にその傷害を軽減させた。その軽減量は抗TNF-α抗体が大きく、傷害部位に局所投与した場合はより軽減効果が高かった。抗TNF-α抗体を投与されたマウスの傷害皮膚を検討したところ、炎症細胞浸潤は野生型マウスと同程度であったが、発現した炎症性ケモカインやiNOSは有意に低下していた。更に抗TNF-α抗体および1400wの同時投与では、1400W単独投与より有意な傷害軽減効果が確認された。従って、抗TNF-α抗体の投与により、マクロファージからのiNOS産生が抑制されただけでなく、TNF-α自体にも細胞傷害活性があり、TNF-α自体による細胞傷害をも抑制し得たと考えられた。また局所投与は皮内注射により行ったが、皮膚障害や全身症状は認められず、安全性も高いことが示唆された。 以上の結果から、抗TNF-α抗体が効果的に皮膚虚血再潅流傷害を軽減でき、その投与方法は局所投与が効率的であり、また1400Wと組み合わせることで傷害軽減効果を増強することが可能であるとわかった。この成果は今後の褥瘡予防療法の確率に意義のあるものである。
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