Research Abstract |
腱は細胞密度が低く,栄養血管系に乏しい組織であるため,一旦損傷されると機能的,生体力学的に十分に再生させることは困難である.近年,レーザーやLEDなどの光照射による組織修復促進効果が報告され臨床応用が進んでおり,腱組織においても同様の効果が考えられる.われわれは,キセノンストロボ光照射による腱由来線維芽細胞の増殖効果について検討した.SDラットのアキレス腱を採取し,コラゲナーゼ処理にて細胞を抽出した後,腱由来線維芽細胞を培養した.10^3個/wellの細胞を暗室にて培養し,キセノンストロボ光照射装置を用いて,光照射なし(C群),10分間の光照射×1日(IR-1群),10分間の光照射×4日(IR_4群)の3群に分け,初回光照射後8,24,48,72時間にそれぞれMTS法による細胞増殖率で判定した.また5×10^5個/wellの細胞を先の3群に分けて培養し,72時間後に培養上清を採取してTBARS法にて酸化ストレスマーカーであるMalondialdehyde (MDA)濃度を測定した.IR-4群の細胞増殖率は24,48,72時間後でC群に比し有意に高くなっていた(p<0.001).IR-1群とC群ではIR-1群で高い傾向にあったが有意差は認められなかった.またMDA濃度はIR-1, IR-4の両群ともC群に比し有意に高くなっていた(p<0.001).細胞活動により活性酸素種が生成されるため,MDA濃度の増加により細胞活性の亢進が示唆された.ミトコンドリアにおける呼吸鎖の末端酸化酵素であるチトクロムcオキシダーゼは光受容体であり,光照射によってミトコンドリアー核の逆行性シグナル経路が活性化され,細胞増殖が促進されると考えられる.またキセノンストロボ光は極めて大きい照度の光を熱量の積算なく照射することが可能であり,高い細胞増殖効果が得られると考えられ,今後,更なる研究を行っていく予定である.
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