2011 Fiscal Year Annual Research Report
チンパンジーとボノボにおける利他性・互恵性・他者理解の検討
Project/Area Number |
22800034
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 真也 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (40585767)
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Keywords | チンパンジー / ボノボ / 集団協力 / 食物分配 / 利他行動 / 互恵性 / 社会学習 / 他者理解 |
Research Abstract |
ギニア共和国ボッソウ村にて野生チンパンジーの調査、コンゴ民主共和国ワンバ村にて野生ボノボの調査をおこなった。主な観察・分析対象としたのは、集団協力行動・食物分配・手助け行動である。集団協力行動にかんしては、両調査地とも類人猿と村人が隣接して暮らしているという非常に珍しい環境にあり、分断された2つの森を行き来するために村道を渡るという行動を観察することができる。その際、道を渡り切ってしまわずに途中で立ち止まり、他の個体を待つ行動がみられた。このような見張り役をする個体を詳細に分析したところ、チンパンジーとボノボで性差・発達による違いがみられることがわかった。これまで集団協力行動はヒトに特有の行動であると考えられており、ヒト以外での研究はほとんどない。チンパンジー・ボノボでの比較研究を通して集団協力行動の進化について新たな示唆が得られ、他分野からも大きな期待を集めている。 実験研究にかんしては、林原生物化学研究所類人猿研究センターおよび京都大学野生動物研究センター熊本サンクチュアリのチンパンジーを対象に、視線計測装置を使った研究・道具使用時における社会行動にかんする研究をおこなった。とくに、他者の道具使用技法をどのように観察学習するかに注目した。チンパンジーが他者の道具使用を見て学習することは知られているが、それがどのようなメカニズムで、どの程度細かい内容まで理解して学習しているのかはわかっていない。技法の社会学習の実験研究、とくに視線計測装置を用いた実験研究は非常にユニークな研究であると言える。今後の分析結果から、チンパンジーにおける他者理解の方略について新たな知見が得られるだろう。 また、日本にボノボを導入する計画も順調に進めている。受入れ準備が着実に整えられ、24年度中に導入できる見通しを立てることができた。近い将来、日本初のボノボ実験研究が実現するだろう。
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Research Products
(13 results)