2011 Fiscal Year Annual Research Report
Neuroligin変異を持つ自閉症モデルマウスのシナプス機能異常の解明
Project/Area Number |
22800081
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
江頭 良明 同志社大学, 研究開発推進機構, 特別研究員 (80582410)
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Keywords | 自閉症 / シナプス接着因子 / neuroligin / neurexin |
Research Abstract |
本研究課題では、自閉症のモデル動物として提唱されている、シナプス接着因子neuroliginに変異を持つノックインマウスの脳において、シナプスの機能と形態を解析することを目指した。昨年度に引き続き、neuroligin3に点変異を持つマウスの電気生理学的解析を行った結果、体性感覚野において、興奮性シナプス応答の増加と抑制性シナプス応答の減少が、また、海馬において、記憶・学習の細胞基盤と考えられる長期増強(LTP)後期相が消失していることが明らかとなった。体性感覚野での興奮・抑制のアンバランスは、感覚機能に異常がある可能性を示唆しており、今後の行動解析により何らかの異常が見られることが期待される。LTP後期相の消失については、同マウスが高い空間学習能力を示すという以前の報告と合わせて考察すると、平常時よりLTP様のシナプス増強が飽和状態にあることを示唆する。そこで、LTP後期相が起こりやすくなっている原因を調べるため、同マウスでシナプスの放出確率及びAMPA型とNMDA型のグルタミン受容体の存在比を調べたが、これらの指標には変化は見られなかった。したがって、neuroligin変異による可塑性への影響には、LTP成立機構として一般的な放出確率やNMDA型グルタミン酸受容体の変化ではなく、異なる調節機構が存在していることを示している。 また本年度は、neuroligin1と2のshRNAをインユーテロエレクトロポレーション法によって野生型マウスに導入し、これらのneuroliginアイソフォームをノックダウンした時のシナプス伝達への影響を電気生理学的に解析した。その結果、neuroligin1をノックダウンした皮質ニューロンでは興奮性シナプス応答が、またneuroligin2をノックダウンした皮質ニューロンでは抑制性シナプス応答が有意に減少することが明らかとなった。以上の結果を総合すると、neuroliginの機能異常は、脳の中で興奮性伝達と抑制性伝達のバランスを壊すことになる。おそらくneuroligin変異マウスが示す自閉症様病態は、このような神経伝達の不均衡に由来するのではないだろうか。
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