2011 Fiscal Year Annual Research Report
ナチ・ドイツの社会秩序形成に関する研究―航空機産業での「労働動員」を中心に―
Project/Area Number |
22820019
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
増田 好純 早稲田大学, 人間科学学術院, 助手 (40586583)
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Keywords | ナチズム / 労働動員 / 強制収容所 / ドイツ航空機産業 |
Research Abstract |
本年度は、ナチ・ドイツにおける「労働動員」を政策レベルで解明するという昨年度取り組んだ課題とその研究成果に基づいて、ドイツ人、外国人、囚人らの現場レベルでの秩序・諸関係とその変容・融解過程の分析を行った。具体的には次の3点が課題であった。 (1)本年度前半から秋にかけて、ドイツ航空機産業で労働に従事した人々の回想禄・証言を広く収集し、労働現場での経験や諸関係の特徴・変化をそれぞれの集団ごとに整理する作業に取り組んだ。この作業から明らかになったのは、傾向としては集団間の関係はナチ・イデオロギーに強く規定されていたことであるが、現場レベルではそうした「公式見解」を隠れ蓑として利害関係や怨恨といった個人の問題もまた表出していた点である。これは近年いわゆる「ホロコースト」をめぐって明らかとなったドイツ社会の反応と傾向を同じくするものといってよい。 (2)第1点目の課題に関連して、社会学による研究成果の摂取に努めた。とりわけ社会システム論による社会秩序や社会階層形成についての研究成果は本研究においても有益な視座を与えるものと考えられるが、歴史学的アプローチと融合させる具体的な方策はなお検討の余地がある。 (3)本年度の史料収集をつうじた研究成果を第1・2点目で得られた知見および昨年度の研究成果と綜合し、自動車工業や鉱業、農業といった他の業種での状況と比較しながら、ドイツ航空機産業における「労働動員」が労働現場に形成した社会秩序、その変容、融解過程の分析に取り組んだ。分析から見えてきたのは、航空機産業の特殊性だけでなくナチ体制下の他の産業分野との共通性の両面であった。 上記の研究成果は、政策的にあくまで推進された人種主義に基づく社会再編と「総力戦の時代」という概念が両立しえなかったという研究代表者の見解をある程度裏付けるものと考えているが、その実証はさらなる検討をつうじて行うこととしたい。
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Research Products
(1 results)