2010 Fiscal Year Annual Research Report
コミュニティ音楽における創造性に関する実践的研究―「臨床音楽学」の構築に向けて―
Project/Area Number |
22820040
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
沼田 里衣 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (10585350)
|
Keywords | コミュニティ音楽療法 / アウトサイダー・アート / 即興音楽 / コミュニティ・アート / 障害者 / 社会参加 / 臨床音楽学 |
Research Abstract |
本研究は、創造性を重視したコミュニティ創成のための音楽実践から得られた知見をもとに、「臨床音楽学」の構築を試みようとするものである。昨今、アートによる障害者を含むコミュニティ創成の可能性は様々に模索されており、福祉や社会学的見地からの意味付けだけではなく、音楽学の角度からその機能を究明することは重要である。初年度となる平成22年度は、(1)コミュニティ論、音楽学、障害学、臨床に関する諸学等の基本文献の収集、(2)知的障害者とその家族、音楽療法家と音楽家による即興音楽グループ「音遊びの会」における月二回の継続した実践研究、(3)コミュニティ音楽療法の実践や議論が活発に行われているイギリスと北欧における調査訪問、を行った。(1)に関しては、障害者の関わる芸術活動の評価について、医療、福祉、芸術などの関連する領域における理論を検討することにより、社会における障害観と芸術の形態の関係を検討した。次年度は、これを(2)の実践に還元するとともに、芸術の価値観が多様な人々が関わるコミュニティのなかでどのように形成されるのかを明らかにしたい。(2)に関しては、まず音遊びの会の初期の活動についてまとめ、イギリスのジャーナル"Music and Arts in Action"に投稿した。音楽療法における即興音楽とアウトサイダー・アートにおける議論を踏まえた上で、音遊びの会の音楽作りにおいて即興性が果たした役割を中心に論じた。1月には(1)の研究内容を参加メンバーに対して発表し、グループで意見交換した。次年度は、個別の聞き取り調査を考えており、そのための質問項目を検討中である。(3)に関しては、社会・文化的背景や福祉制度の差異により、その社会における音楽的内容やその活動の意味、用いられる理論は非常に異なることが見出され、それにより日本における活動を客観的に捉えることに役立った。
|
Research Products
(1 results)