2011 Fiscal Year Annual Research Report
古代日本文学における「交易」の研究-日本海地域を中心に
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22820063
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
堂野前 彰子 (岡本 彰子) 明治大学, 文学部, 講師 (50588770)
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Keywords | 交易 / 古代日本文学 / 日本海 / 交換 / 『遺老説伝』 / 『三国遺事』 / 製鉄技術 / 韓半島 |
Research Abstract |
平成23年度は韓半島との関係を視野に入れて(1)文献研究と(2)フィールド調査を行い、(3)二年間の調査研究の成果から、日本海交易の様相を総合的に捉えることを試みた。東日本大震災の影響により民俗調査を主とするフィールド調査を予定通り行うことは難しかったが、韓半島との間た浮かぶ壱岐や隠岐、あるいは北部九州や伯耆、丹後などの調査から、歴史時代以前の交流や交易の様相を知ることができた。 そのフィールド調査を踏まえた文献研究の一つ目の成果として、『万葉集』におさめられた山上憶良作嘉摩郡三部作の背後に、韓半島からの文化伝播を担っていた古代官道「豊前路」の存在を見出し、そのような「交易」の道が渡来人憶良の思想を支え、歌をよませる契機にもなったことを指摘した。二つ目の成果としては、伯耆国を中心に分布する楽々福神社の鬼伝承に関する研究で、伯耆国の産鉄集団は出雲より吉備との関係が深いことを明らかにするとともに、鬼すなわち製鉄集団が征伐される背後には新しい製鉄技術の伝播があり、伝承の様々なヴァリエーションとは技術更新のさまを語っているのだという結論に至った。このように日本海潮流や河川を利用した交通及び古代街道に注目し、人やモノの流れに即した「交易」の視点を導入して神話や伝承を新しく解釈することを試み、伝承や神話でさえ「交易」の対象になることを示した。 また、複眼的に行ってきた琉球説話集『遺老説伝』の研究においても、「交易」の視点を導入することにより、聖地としての御嶽の中にも「市」的な機能があるという新しい解釈を行い、韓国延世大学における国際学会では、『三国遺事』に描かれた王権と関わる「夢」の伝承に、『遠野物語』『古事記』の類話との比較から導いた「交換」の原理を援用して新しい解釈を加えた。国際学会での発表により、韓国の説話研究者との国際交流を深めることができたことも大きな成果であった。
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Research Products
(6 results)