2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヘルダーリンの詩学から考察する「美的な快」―脳神経科学と心理学からのアプローチ
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22820071
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小野寺 賢一 (上 賢一) 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (80581826)
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Keywords | フリードリヒ・ヘルダーリン / 抒情詩の理論「音調の交替」 / アントニオ・ダマシオ / 情動と感情の科学 / デートレフ・リンケ / 脳神経科学 |
Research Abstract |
招待講演「Der Wechsel der Toene im Waka.Versuch eines Vergleichs japanischer und deutscher Lyrik」では、脳神経科学者であるアントニオ・ダマシオの情動と感情の科学を用いて、ヘルダーリンの抒情詩の理論「音調の交替」の一般的有効性を示した。まず、万葉集所収の二編の和歌に情動と感情の規則的交替が表現されていることを示し、同様の現象がヘルダーリンの哀歌「ディオティーマの死を悼むメノンの嘆き」にもみられることを指摘した。その上で「音調の交替」がこの規則的交替を表現するための理論であることを論じ、この理論がヘルダーリンの詩の解釈にとどまらない、より広範な適用可能性を有することを示した。 口頭発表「ヘルダーリンの「音調の交替」の理論について-脳神経科学からのアプローチ」では、脳神経科学者デートレフ・リンケの説を批判的に吟味し、「音調の交替」が-リンケの主張するように脳の認知プロセスや表象の産出過程にではなく-情動や感情といった機能に関わるものであることを論じた。その上で「音調の交替」の基本構造をアントニオ・ダマシオの理論に依拠して解釈することの妥当性を示した。 この基本構造とは、意識形成に先立つ有機体の物質的構造を間断なく写し取っているニューロンの活動パターンから、そうした身体状態の一連の変化にほかならない情動、そして情動の感性的知覚として生じる感情への漸次的移行である。本発表では以上の議論がヘルダーリンの理論的文書の体系的読解を通じても成り立つことを示し、次年度に続く研究全体の基礎固めを行った。同発表に基づき、論文「ヘルダーリンの「音調の交替」について-脳神経科学からのアプローチ」を執筆した。
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Research Products
(3 results)