2010 Fiscal Year Annual Research Report
「存在の呪縛」からの思惟の解放と「無の論理」の構築
Project/Area Number |
22820081
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
松井 吉康 神戸学院大学, 人文学部, 講師 (10582869)
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Keywords | 存在の呪縛 / 無 / 無ではない / フレーゲ / ウィトゲンシュタイン / パルメニデス |
Research Abstract |
本研究は、「端的な無」と「無ではない」という究極の可能性を論理的に対照することを通して、新たな存在理解の地平を切り開こうとするものであるので、20世紀以降急速に発展してきた論理的な思考方法を吸収し、それを議論に活用することが急務であった。そこで22年度においては、フレーゲ、ウィトゲンシュタイン、さらには現代の分析哲学のアプローチなどを研究し、そうした視点から「無の論理」を構築することがおし進められた。それと平行して、古代ギリシアから現代に至る哲学史を貫く問題意識の内に「現実の説明」ということがあるという事実が新たに確認された。これは当たり前のことのようだが、それは、存在を問うていると自称する哲学者たちの関心が、あくまでも「現実の存在」にあることを意味するのであり、そのこと自体がいわば「哲学史を貫く存在の呪縛」を形成したのだということが明らかとなった。見方を変えれば、現実への関心が、非現実である「端的な無」への無関心の源なのである。こうしたアプローチから生まれた思考は、第六回ハイデガー・フォーラムにおける発表「『思索の事柄』と『無』」に結実したが、そこでは分析哲学系の研究者から好意的に評価されることとなった。また本研究が問題とする「存在の呪縛」は、be動詞に例外的な優位性を与えている欧米諸語の言語的制約と深くリンクしているのであるが、そうした私の指摘は、ドイツ語圏の研究者の注目を集め、本年度チューリッヒで開催されるドイツ語圏日本学研究者会議の開会記念講演を主催者から依頼されるに至った。その講演はドイツ語でなされるが、題目は「日本語で哲学すること」である。このように本研究の成果は、国内のみならず海外でも注目を浴びるに至っているのである。
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Research Products
(2 results)