2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22830107
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Research Institution | Nagano University |
Principal Investigator |
高木 潤野 長野大学, 社会福祉学部, 講師 (00588519)
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Keywords | ダウン症 / 発話の不明瞭さ / 音韻表象 / 構音障害 / メタ言語意識 / 誤りの一貫性 / 知的障害 / 言語障害 |
Research Abstract |
音韻表象の不完全さがダウン症児の構音の誤りや発話の不明瞭さに関わっているのではないかという指摘(Dodd and Thompson,2001)を踏まえ、刺激語の構音の誤り方によってはおかしいと判断される場合とされない場合があるのではないかと考えた。そこで本研究では、目標とする語からの異なり方の大きい刺激と小さい刺激を用い、ダウン症児は目標とする音と近い音に対しては許容する反応を示すかどうかを明らかにすることを目的とした。方法は、同一の語につき「異なりなし条件」「異なり小条件(語頭の子音の構音点のみを変化)」「異なり大条件(語頭の子音の構音点、構音方法、有声無声を変化)」の3つの条件で提示し、それぞれについておかしいと思うかを判断させる方法で行った。ダウン症児のデータを分析したところ、正しいと答えた反応の割合は「異なりなし条件」では90.5%「異なり小条件」では76.2%、「異なり大条件」では42.9%であった。また評定の際におかしいと判断しているかどうかを断定できない回答を除外した正答率は、各条件で90.5%、19.0%、52.4%であった。特に「異なり小条件」において正答率が低かったという結果から、ダウン症児は誤り方の大きいもの(例えば「スイカ」を「グイカ」、「サカナ」を「ガカナ」のように誤る)と比較して、誤り方の小さいもの(例えば「スイカ」を「シュイカ」、「サカナ」を「タカナ」のように誤る)では誤っていることを認識することが困難であると考えられた。このことから、音韻表象の不完全さがダウン症児の構音の誤りや発話の不明瞭さの要因の1つである可能性が示唆された。このことから、ダウン症児に対する言語指導の方法として、正しい構音方法の練習だけでなく、単語全体の正しさを向上させる方法が有効であると指摘できる。具体的には、メタ言語意識の向上に視点をあてた指導や、誤っている音の産出に対しては誤っていることをフィードバックすることが有効であると考えられる。
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Research Products
(3 results)