2010 Fiscal Year Annual Research Report
貧困に対する活動と社会的レジリエンスの社会学的研究-シカゴ学派からの展開と実践
Project/Area Number |
22830109
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
西川 知亨 大谷大学, 文学部, 講師 (50582920)
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Keywords | 貧困 / レジリエンス / シカゴ学派 / 社会学史 / 社会問題 / 人間生態学 / 総合的社会認識 / 居場所 |
Research Abstract |
日本の「貧困」/貧困層とその支援に関する全国の活動(関西、東海、北陸、関東、東北地方など)、および比較調査のための米国カリフォルニア州のフィールド調査を進めるなかで、貧困に対抗する活動が社会的レジリエンスに及ぼす影響についての考察と論点の整理をおこなった。同時に、これらの調査を理論的・方法論的に裏付ける初期シカゴ学派の「総合的社会認識」の社会学の検討を進め、活用を構想することで、日本における、専門家/「当事者」双方の意欲・意図が交錯した「生態学的」活動の様相について解明してきた。初期シカゴ学派の「総合的社会認識」の方法論的含意のなかでも、とくに時間/空間、科学/政策、等の二分法の絡み合わせに焦点を合わせ、フランクフルト学派などの公共圏研究の伝統をも参照するなかで、「居場所の人間生態学」の現代的展開を図った。そのなかで主に明らかとなったのは、1.支援者/相談者の関係の柔軟性が社会的レジリエンスを高めている可能性、2.世代経験による活動参画の様相、3.非グローバル性、4.貧困に関するトピックの権力性/アジェンダ・セッティングの様相、5.対抗的公共圏の展開、である。とくに近年の対抗的公共圏としての反貧困活動は、直近5年間を見てみると、1.「公共圏の衰退の問題化」、2.「派遣村」活動の広がりと「対抗的公共圏の創出」、3.ネットワーク重視の反貧困活動と「対抗的公共圏の諸圏域との協同・ネットワーク化」、の時期へと展開していく様相が浮かび上がった。総じて見れば、初期シカゴ学派の社会的再組織化論から、現代的な社会的レジリエンス論への構想が図られた。
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