2011 Fiscal Year Annual Research Report
貧困に対する活動と社会的レジリエンスの社会学的研究―シカゴ学派からの展開と実践
Project/Area Number |
22830109
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
西川 知亨 大谷大学, 文学部, 講師 (50582920)
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Keywords | 貧困 / レジリエンス / シカゴ学派 / 社会学史 / 社会問題 / 人間生態学 / 総合的社会認識 / 居場所 |
Research Abstract |
日本の「貧困」/貧困層とその支援に関する全国の活動(関西、東海、北陸、関東、東北地方など)、および比較調査のための米国カリフォルニア州の調査を進めるなかで、貧困に対抗する活動が社会的レジリエンスに及ぼす影響についての考察と論点の整理をおこなった。同時に、これらの調査を理論的・方法論的に裏付ける初期シカゴ学派の「総合的社会認識」の社会学の検討を進め、活用を構想することで、日本における、専門家/「当事者」双方の意欲・意図が交錯した「生態学的」活動の様相について解明することを試みた。その結果として得た社会的レジリエンスの諸命題は、以下のようなものである。(1)生活の再組織化のためには、社会資源だけでなく、個人の資質も、資源として利用可能である。(2)社会的レジリエンスは、個人的レジリエンスと不可分の関係にある。(3)社会的レジリエンスは、社会保障やネットワークだけでなく社会意識もかかわる。(4)柔軟な役割関係は、社会的レジリエンスを高める可能性を有する。(5)社会的レジリエンスは、リジッドな社会的組織化とは異なる「包摂」を可能にする。(6)専門家間の相互作用が、総合的な問題解決を可能にする可能性がある。(7)前命題にかかわらず、社会的レジリエンスの担い手は、専門家だけではない。(8)社会的レジリエンスは、モデル(メンター)/ファシリテーター/キーパーソンを示すことにより獲得されることがある。(9)社会的レジリエンスは、対抗的な関係をとることで、促進される場合もある。(10)圏域の関係性を見てみると、ネットワークだけでなく、社会保障も社会的レジリエンスにとって重要である。
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