2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22840031
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
仲野 英司 高知大学, 教育研究部・自然科学系, 助教 (70582477)
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Keywords | 繰り込み群 / 臨界現象 / QCD相図 / カイラル相転移 |
Research Abstract |
時間発展とともに水蒸気が膨張冷却し水滴ができるような現象は動的相転移であり、その過程が臨界点近傍を通る場合は動的臨界現象である。一般に動的臨界現象は、相転移を特徴づける秩序変数の相関関数が大きく発達(臨界点では発散)し、高次の相関関数も同様な特異性を示す。この様な臨界点近傍の非平衡状態を記述する運動方程式は、非摂動的定式化を必要とする。本研究では、有限温度・密度の量子色力学(QCD)の相図を非摂動的定式化によって探究し、その動的性質も明らかにすることにある。そこで、非摂動的定式化の有効な候補として、「汎関数繰りこみ群」の方法を試みた。この方法は、相関関数の生成汎関数を経路積分で表し、汎関数積分における高エネルギー・運動量モードを順に取り込むことで厳密な繰り込み群方程式を導く。この方程式を解くには、一般に近似が必要である。重要な点は、非摂動性を保ちながら意味のある物理を引き出す近似法を探ることである。 初めに汎関数繰りこみ群の方法をQCDと同じ普遍性を内包する有効理論に適用し、温度とバリオン数化学ポテンシャル平面におけるカイラル相転移と臨界点を評価した。ここで用いた近似方法では、有効ポテンシャルの汎関数空間を微分展開の最低次までに制限し、繰り込み群方程式を閉じた形にして数値解析を行った。その結果、相図の全体的な振る舞いは、従来の平均場近似によるものと定性的に変わらないが、臨界点近傍における振る舞いをより精密に評価できることが分かった。特に、相図における等エントロピー線と等バリオン数線の振る舞いが、臨界点の普遍関数から導かれる幾何学的性質と整合することを示した。ここで評価したエントロピーとバリオン数の等高線は、本研究課題の中心である、重イオン衝突実験における系の時間発展とそこでの輸送係数を調べるうえで必要となる。
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Research Products
(2 results)