2023 Fiscal Year Annual Research Report
材料組織からのトライボロジー・エンジニアリング: 濡れる材料表面設計
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22H00261
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
戸高 義一 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50345956)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
椎原 良典 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90466855)
久保 淳 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (40760335)
光原 昌寿 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (10514218)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | トライボロジー / 濡れ / 材料組織 / 格子欠陥 / 表面 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は,2022年度に作製した合金を活用し,金属における濡れの挙動を制御するミクロ支配因子を,材料の先天的性質(結晶構造 等の不変の特性)と意図的に組み込むことのできる後天的性質(格子欠陥の導入 等の可変の特性)を踏まえた材料組織の観点から調査した.また,濡れの挙動と潤滑油中の摺動環境下での摩擦・摩耗特性との関係について,潤滑油中の溶存酸素の影響も考慮し,調査した. 金属材料組織(材料の先天的・後天的性質)が摺動特性に及ぼす影響を明らかにするため,2022年度に作製した合金に対して巨大ひずみ加工・熱処理により材料組織制御を行い,材料組織と試料表面に形成した吸着膜の電子顕微鏡観察を実施した.純金属の状態では異なる濡れの挙動を示す場合であっても,合金化することで,組成比に対応する濡れ性の変化が認められた.また,それらの試料においても,材料組織を微細化することで吸着膜の分布(濡れ)が均一になる傾向が認められた. 材料組織制御した試料について,潤滑油中の溶存酸素量を調整した油潤滑環境下摩擦摩耗試験により,酸素・酸化の影響,濡れの挙動と摩擦・摩耗特性との関係を調査した.良好な濡れ性を示す試料において摺動特性は優れ,電子顕微鏡にて観察された濡れの挙動と摺動特性に相関が認められた.また,潤滑油中の溶存酸素量が少ない場合に,および,表面酸化膜がない場合に,より良好な摺動特性を示した.これらの現象を化学吸着膜の形成機構と酸素拡散・酸化現象の観点から第一原理計算により調査した.その結果,摩擦摩耗試験の結果と良い整合を示した.濡れ性に及ぼす結晶方位依存性についても考察を進めている.さらに,粗視化分子動力学法に基づく潤滑シミュレーションにより,境界潤滑における油膜の形成・剥離の動的な現象について,表面凹凸の影響も考慮し,調査を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は,2022年度に作製した合金を活用し,金属における濡れの挙動を制御するミクロ支配因子を,材料の先天的性質(結晶構造 等の不変の特性)と意図的に組み込むことのできる後天的性質(格子欠陥の導入 等の可変の特性)を踏まえた材料組織の観点から調査することを目的とした.また,濡れの挙動と潤滑油中の摺動環境下での摩擦・摩耗特性との関係について,潤滑油中の溶存酸素の影響も考慮し,調査することも目的とした. 金属材料組織(材料の先天的・後天的性質)が摺動特性に及ぼす影響を明らかにするため,2022年度に作製した合金に対して巨大ひずみ加工・熱処理により材料組織制御を行い,材料組織と試料表面に形成した吸着膜の電子顕微鏡観察を実施した.濡れの挙動に及ぼす合金化(材料の先天的性質)の影響や格子欠陥(材料の後天的性質)の影響などについて調査した. 材料組織制御した試料について,潤滑油中の溶存酸素量を調整した油潤滑環境下摩擦摩耗試験により,酸素・酸化の影響,濡れの挙動と摩擦・摩耗特性との関係を調査した.また,摺動特性に及ぼす潤滑油中の溶存酸素の影響を化学吸着膜の形成機構と酸素拡散・酸化現象の観点から理解するため,第一原理計算により調査した.さらに,粗視化分子動力学法に基づく潤滑シミュレーションにより,境界潤滑における油膜の形成・剥離の動的な現象について,表面凹凸の影響も考慮し,調査を実施した. 以上の通り,適切な金属種・合金系を選択・作製・材料組織制御し,潤滑油中の溶存酸素量を調整した油潤滑環境下摩擦摩耗試験により,系統立てて実験的に調査を実施している.また,計算との有機的な連携により,トライボロジー現象のマルチスケールな理解を進めている.これらのことから,当初の計画の通りおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は,前年度までの取り組みを継続・発展させ,金属における濡れの挙動を制御するミクロ支配因子を,材料組織(材料の先天的・後天的性質)および油潤滑環境(潤滑油中の溶存酸素量)を考慮し,潤滑油分子の極性基と材料表面原子との吸着面における対応の観点から明らかにする.また,濡れの挙動と潤滑油中の摺動環境下での摩擦・摩耗特性との関係づけを行う. 材料組織(材料の先天的・後天的性質)が摺動特性に及ぼす影響を明らかにするため,2022年度に適切な金属種・合金系を選択・作製した.異なる濡れの挙動を示す金属を合金化し供試材とすることで,濡れの挙動に及ぼす材料の先天的性質の影響を調査する.また,巨大ひずみ加工・熱処理により材料組織を制御し,濡れの挙動に及ぼす材料の後天的性質の影響を調査する. 組織制御した試料について,多段階の物理的階層で生じるトライボロジー現象をマルチスケールでの実験・解析により調査する.潤滑油中の溶存酸素量を調整した油潤滑環境下摩擦摩耗試験により,酸素・酸化の影響を含む,摺動特性を評価する.試料表面原子と直接的な相互作用を示す添加剤分子の極性基, 炭化水素鎖の観点からも調査する.また,XPS, FM-AFM, FT-IR, 濡れ性試験, 電顕 等により,材料表面・吸着膜の特徴・特性を分析・解析する. それらの結果を第一原理計算, 粗視化分子動力学法 等の計算機シミュレーションへ展開し,実験・計算の有機的な連携により,トライボロジー現象のマルチスケールな理解を進める.
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Research Products
(8 results)