2023 Fiscal Year Annual Research Report
Development of spatiotemporal habitat diversity indices and their application to river ecosystem management: evolutionary potential of biological speciation and segregation under changing environments
Project/Area Number |
22H00571
|
Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
竹門 康弘 大阪公立大学, 国際基幹教育機構, 客員研究員 (50222104)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角 哲也 京都大学, 防災研究所, 教授 (40311732)
渡辺 幸三 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (80634435)
加藤 幹男 大阪公立大学, 国際基幹教育機構, 教授 (30204499)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 生息場類型 / 生息場齢 / 生息場寿命 / 時空間的棲み分け / 種分化ポテンシャル / 河床地形管理 / 生態系管理 / 総合土砂管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ダムや河川改修などの人為影響により多様性が低下した河川生息場(瀬・淵・ワンド・タマリなど)を保全・再生するために、以下3つの研究を実施している 1)生息場の生成・消滅履歴を種多様性の関係を明らかにする研究:木津川の15-6km砂州において定点観測を行い、出水後の日数に応じたワンドやたまりの生成消滅様式や、河道内の流心明帯(砂礫が常時移動し有機物の堆積が起こらない砂利底生息場)と流心暗帯(砂礫の堆積の起きにくい安定した石礫底生息場)、河岸暗帯(瀬頭、砂州側方、砂州尻の緩流部に有機物やシルト粘土が堆積する生息場)の生成消滅様式をについて調査した。また木津川や賀茂川などの流心明帯にはヨシノマダラカゲロウ、ミツトゲマダラカゲロウ、ヒメヒラタカゲロウ属、クサカワゲラ属が多く、流心暗帯にはオオマダラカゲロウ、アカマダラカゲロウ、シマトビケラ科が多いことがわかった。これらの種群のうちカゲロウ目について遺伝的特性の解析を行い、生息場と種内変異の関係についての知見を得た。 2))生息場の多様な生成・消滅履歴を生み出す土砂水理過程をダム管理や河道管理シナリオに反映する研究:伝統的河川工法の局所的な侵食堆積過程が生息場多様性を生み出す水理条件についての知見を得た。 3)生息場棲み分けと種分化の関係を解明する研究:鴨川では、トゲマダラカゲロウ属の個体群間の遺伝的分化に基づき隠蔽系統を検出し生息場選好性の違いを分析した。天竜川の5地点を対象にして、キックネット法で定性採取した底生動物群集からDNAを抽出して、次世代シークエンサーを用いたメタゲノム解析を実施した。このメタゲノム解析からは、各底生動物群集に含まれるすべての種からランダムに拾われた膨大な数の遺伝子座が検出され、種間あるいは種内の系統関係あるいは生息場間の棲み分けに関係する適応的進化を説明する遺伝子が検出されることが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
河川における水域生息場の時空間的な存在様式の類型化と棲息種の群集組成との対応関係については淀川水系木津川・宇治川・賀茂川、 天竜川、落合川、紀伊丹生川などの調査結果に基づいて、有用な試料を得ることができた。一方、本研究で計画した出水により新たに形成された生息場が消失するまでの棲息種の群集組成変化をモニタリング調査については必ずしも予定通りの成果が得られていない。2022年度には、各地調査地で想定した平均年1回の生起確率以上の出水が起こらなかったため出水前後の生息場変化のモニタリング調査できなかった。このため、2023年度には出水規模に関わらず、任意の規模の出水撹乱後に平水や渇水時までの生息場変化をモニタリング調査することを目標とした。ところが、2023年の9月から2024年3月までの本来平水や渇水が生じる期間にも降雨日が多く、中小規模の出水が頻発した結果、生息場の形成後の時間と底生動物群集の種組成との対応関係について短期間のデータしか得ることができなかった。 また、2023年度にも平均年1回の生起確率以上の出水が起きていないので、引き続き撹乱規模と安定時間の影響に関するモニタリング調査の準備体制を木津川の定点観測では、中小規模の出水後の日数に応じたワンドやたまりの生成消滅様式や、河道内の流心明帯(砂礫が常時移動し有機物の堆積が起こらない砂利底生息場)と流心暗帯(砂礫の堆積の起きにくい安定した石礫底生息場)、河岸暗帯(瀬頭、砂州側方、砂州尻の緩流部に有機物やシルト粘土が堆積する生息場)の生成消滅様式をについてのデータや知見を得ることができた。すなわち、大規模出水時の変化や長期にわたる安定期の変化については不足しているものの、日常的に生じる生息場の変動様式については目的に沿った成果が得られたといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
木津川、天竜川、那賀川においては引き続き、地形と生息場のモニタリングを継続し、大規模出水や長期安定期間の影響調査に備える。このため定期的なドローン撮影・衛星画像の取得・定点写真撮影などを継続する。 これまでに調査した生息場齢と生物群集並びに遺伝的特性との対応関係については、生息場類型に対応して検出されたDNAの種内変異や隠蔽種系統について、より詳細な形態記載並びに鋭敏な種判別法を確立する。その上で、トゲマダラカゲロウ属、ヒメヒタラカゲロウ属、ヒメフタオカゲロウ属などについては、種内変異の記載や隠蔽種の新種記載をすすめる。また、近縁種間によるすみ分け(生息場選好性の差異)が良く調べられているヒラタカゲロウ科について、DNA解析に基づく分子系統解析を進め、系統分岐と表現型獲得(生息場選好性)とを対応付ける。群集構成要素(種群)の解析に基づき、生息場間の生物類似度を評価する。 一方、生息場間や異なる生息場齢(age)間の種の適応放散に関する仮設に関しては、ddRAD(ゲノム探索)を用いた分析を継続するとともに、ショットガンメタゲノムによる局所群集の機能的多様性を評価することによって、生息場と生物の関係に新たな意味を付ける。さらに、環境DNAのメタバーコーディング解析で集団遺伝構造をみて,生息場間の集団レベルの棲み分けも理解する予定である。
|
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Book] 流砂環境再生2023
Author(s)
角 哲也、竹門 康弘、天野 邦彦、一柳 英隆
Total Pages
502
Publisher
京都大学学術出版会
ISBN
9784814004997