2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22H04096
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井上 優輝 広島大学, 附属高等学校, 教諭
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 数学的活動 / 先入観 / 再折り |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,『先入観突破』を「先入観により無意識に思考がせまく制限されていた事柄について,驚きや感動を含む体験をすること」と定め,『先入観突破』が数学的活動につながるトリガーとなりうるかを検証することを主目的とした。検証のために,提案授業「立方体の展開図の再折り(中学校3年生対象)」を開発し,国立大学附属中学校の3年生を対象に授業を実施した(2023年2~3月)。提案授業では,立方体の展開図としてよく目にするラテンクロス(正方形6つからなる十字形)を四面体などの立方体以外の図形に折る様子を実演し,「展開図の頂点どうしを結んだ線分のうち辺と平行であるものしか折り線にしてはいけない」「正方形を面にしなくてはいけない」などの先入観を生徒に自覚させた後に,グループで立方体の展開図の再折りをテーマにレポートを作成させた。ワークシートの記述からは,生徒は『先入観突破』により,自発的な問いを派生的に発生させている様子がうかがえた。具体的には,実演の観察から直接的に想起される「どのような立体ができるか」という問いだけではなく「何種類できるか」「折ることのできる図形の特徴は何か」「折ることのできる立体の中で体積が最大のものは何か」などの問いを発生させていた。授業後に実施したアンケートからは,生徒が『先入観突破』に対し肯定的な印象をもち「難しそうであるが,考えたい内容だ」と感じている様子を捉えることができた。本研究では,提案授業の開発・実施,ワークシート・アンケートの分析を通して,『先入観突破』は,その体験から直接的に生じうる問いだけでなく,体験から生徒が自発的な問いを発生しうる活動であり,主体的に問題を見いだすという点で数学的活動のトリガーとなりうることを示すことができた。
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