2022 Fiscal Year Annual Research Report
大麻リキッドに含まれる幻覚成分THCの由来識別法の確立
Project/Area Number |
22H04279
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Research Institution | 大阪府警科学捜査研究所 |
Principal Investigator |
松本 謙吾 大阪府警科学捜査研究所, 研究員
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大麻 / 質量分析 / THC |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】従来、流通していた大麻リキッドは大麻草より幻覚成分等を抽出・濃縮したものであったが、現在は大麻幻覚成分Δ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)を多く含むものの、その他の大麻由来成分を含まないものなど、大麻草由来ではなく化学合成によりTHCを生成し、添加した可能性のあるものが散見される。また、大麻成分でありながら、現在は規制されておらず入手が比較的容易なカンナビジオール(CBD)に酸を加えることでTHCへと変換されることは知られているが、その変換の詳細を追跡し、CBDやTHCの時間毎の比率や合成由来に特異的に生じる副生成物などをモニターすることで大麻成分THCの由来識別法の確立を目指した。 【研究方法】インターネット掲示板に記載のあった変換方法(氷酢酸に溶解させたCBDにバッテリー液相当の希硫酸又は希塩酸を加える)をベースに加える酸の濃度や、CBDを溶解させる溶媒を変化させ、それぞれの化合物の生成状況をガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)によりモニターした。 【研究成果】CBDからΔ9-THCを経由してΔ8-THCへと変換される際の各成分の比率をモニターした結果、酸の種類ではなく濃度に影響を受ける事が明らかになった。よって各成分の比率より使用された酸を特定することは困難であった。また、溶媒条件を検討した中で、CBDよりTHCを合成した際に特異的な副生成物であるΔ8-iso-THCと推定される化合物が確認された。また、溶媒にアルコールを使用した際は、そのアルコールに対応した分子量が付加したΔ9-THCやΔ8-iso-THCと推定される化合物が確認された。これより、溶媒にアルコールを使用した場合においては、アルコール付加体とΔ8-iso-THCの存在が、THCが化学合成由来であると示す根拠に成り得ると考えられる。
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