2022 Fiscal Year Annual Research Report
NTRK融合遺伝子標的抗がん剤エヌトレクチニブ誘発精神障害に対する抑肝散の効果
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22H04345
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岩田 直大 岡山大学, 大学病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 抑肝散 / 抗がん剤誘精神機能障害 / Y字型迷路試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的:エヌトレクチニブはトロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)融合タンパクを標的に抗腫瘍効果を示す一方で、副作用として認知機能障害の発生率が高いことが臨床上大きな問題となっている。これはエヌトレクチニブが精神機能に関与するTRK-Bに非特異的に結合することが原因にあげられる。一方で、漢方薬である抑肝散はTRK-Bの特異的リガンドである脳由来神経栄養因子を増加させる報告がされている。そこで本研究では、エヌトレクチニブ誘発認知機能障害に対する抑肝散の効果を明らかにする。 研究方法:5週齢ICR雄性マウスにエヌトレクチニブ(30mg/kg/day, p.o.)を2週間投与し、最終投与1時間後に認知機能を評価するY字型迷路試験を行った。抑肝散(1g/kg/day, p.o.)はエヌトレクチニブの投与30分前に投与した。陽性対照群として、スコポラミン(1mg/kg, i.p.)をY字型迷路試験開始30分前に投与した。 研究成果:エヌトレクチニブ群の自発的交替行動率は、スコポラミン群と同様、コントロール群に対して有意に低下した。エヌトレクチニブ+抑肝散併用群の自発的交替行動率は、エヌトレクチニブ群に対して有意に増加した。エヌトレクチニブは、添付文書上、認知障害の発生率が27.4%となっている。今回、行動薬理学的手法を用いて、エヌトレクチニブによる空間認知障害を初めて評価し、それに対する抑肝散の効果の検討を行った。エヌトレクチニブは、Y字型迷路試験において空間認知障害を誘発することが示唆され、抑肝散と併用することによって、誘発される空間認知障害を改善することが示唆された。抑肝散はエヌトレクチニブによって誘発される認知機能障害に対して有効な予防薬になり得ることが示唆された。
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