2022 Fiscal Year Annual Research Report
Generation of CO2 fluid and mantle carbonation in subduction zones
Project/Area Number |
22H04932
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岡本 敦 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (40422092)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平内 健一 静岡大学, 理学部, 准教授 (10633290)
武藤 潤 東北大学, 理学研究科, 教授 (40545787)
Madhusoodhan SatishKumar 新潟大学, 自然科学系, 教授 (50313929)
宇野 正起 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (50748150)
渡邉 則昭 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (60466539)
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Project Period (FY) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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Keywords | マントル / 炭酸塩化 / 三波川帯 / オマーンオフィオライト / 水熱実験 / CO2流体 / 反応誘起破壊 |
Outline of Annual Research Achievements |
沈み込み帯のマントルウェッジと表層近傍でのマントル炭酸塩化の実態を解明するために、フィールド調査、室内実験、モデリングを並行して効率的に進めた。天然の蛇紋岩体の調査では、四国三波川変成帯の蛇紋岩体、および中東のオマーン国に露出するオマーンオフィオライトの調査を行った。三波川帯では、炭酸塩化が進んでいない典型的な例として富郷蛇紋岩体について反応帯を精密に解析し、温度圧力条件を制約するとともに、MgとSiなどの元素移動の描像を明らかにした。また、オマーンオフィオライトのマントル岩石に高温型蛇紋石であるアンチゴライトの脈が発達していることを発見し、微量元素の解析などからこれが沈み込み帯起源であることを明らかにした。その脈の周辺の反応帯から物質移動解析を進めている。三波川帯の炭酸塩化した蛇紋岩(樋口岩体、猿田岩体)とオマーンの炭酸塩化した蛇紋岩の解析も進めている。また、マントルウェッジ条件(500degreeC, 1 GPa)での蛇紋岩/泥岩/かんらん岩の反応境界を模擬した実験システムを試行錯誤の上、構築し、まずは静水圧条件での実験をおこなっている。その結果、H2O流体で引き起こされるシリカ交代作用よりも、H2O-CO2流体ではより多くの滑石が生成することを見出しており、その系統性の検討を進めている。また、表層近傍を模擬した天然の蛇紋岩炭酸塩化の実験も進め、ブルース石を伴う岩石の不均質さに起因した反応誘起破壊を見出しており、その普遍性を検討している。また、軸圧を独立に制御できる反応―透水試験機のプロトタイプを制作した。さらに、典型的な沈み込み帯に沿った地殻―マントル境界の地化学計算を行い、MgとSiの相対的な移動度が沈み込み帯の温度構造によって変化することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、三波川帯のフィールド調査が進んでいる(富郷蛇紋岩体、猿田蛇紋岩体、樋口蛇紋岩体)。特にターゲットの1つである、富郷岩体については、岩石学的解析、物質移動解析を進め、Contributions to Mineralogy and Petrology誌に掲載された。また、3年目に予定していたオマーンオフィオライトのフィールド調査を本年度に実施することができ、亀裂を伴う炭酸塩化や蛇紋岩化の実態についてデータを取得することができた。特に、高温型蛇紋石(アンチゴライト)脈を見出し、マントルウェッジの流体流動についての解析を進めることができたのは予想以上の大きな成果である。 また、マントルウェッジ条件での反応実験では、蛇紋岩/泥岩/かんらん岩の岩相境界を設定した静岩圧での実験をおこなった。CO2源としてシュウ酸を用いる本実験系は分担者ともに初めてであり、多くの試行錯誤を必要としたが、最終的に、H2O系とH2O-CO2流体による反応進行度の違い、マントル側と泥岩側の対照的な物質移動様式などを明確に予想以上に明瞭に見出すことができた。 表層近傍での炭酸塩化の実験については、ブルース石を伴う岩石の不均質さに起因して、明瞭な反応誘起破壊を見出している。長期的な反応実験であるが、この成功は次のステップとしては需要であり、本年度、開発に成功した反応―透水試験機を用いて、長期的なモニターに繋げられる。地化学モデリングは沈み込み帯のプレート境界の温度圧力条件に沿った交代作用の計算を行い、プレート境界の温度構造によるMgとSIの相対的な元素移動度の変化を明らかにしつつある。 以上、当初の計画を順調に進めつつ、アンチゴライト脈の発見や、室内実験での天然の蛇紋岩を用いた反応誘起破壊の再現などにも成功しており、当初の計画以上の進展と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
天然の蛇紋岩体:炭酸塩化が著しい三波川帯の樋口岩体について、炭酸塩―滑石脈の構造解析を行い、応力場、流体圧などの解析を進める(2023年)。三波川帯に産する様々な蛇紋岩体について、網羅的に試料を入手して、炭酸塩化の程度と炭素―酸素同位体測定を進める。オマーンオフィオライト、モンゴルのオフィオライトのマントル炭酸塩化について、亀裂形成、および、物質移動の観点から進める(2024年度以降)。マントルウェッジ条件の反応―変形実験:地殻岩石(泥質片岩、石英岩)の間のマントル岩石(かんらん岩と蛇紋岩)の静岩圧な反応実験を、、条件を増やして行う(2023年度)。H2O流体とH2O-CO2流体での生成物に対して詳細な物質移動解析、および熱力学的解析を行い、交代作用に関するCO2流体の影響を明らかにする(2024年度以降)。また、差応力下での変形実験を進め、炭酸塩化がプレート境界のレオロジーに与える影響、スロースリップとの関係性を検討する(2024年度以 降)。 表層近傍条件での反応―透水実験:プロトタイプの装置を用いて、アナログ物質であるMgOを用いた膨張反応による破壊、浸透性の増大に関する実験を行う。体積変化、浸透率の変化と、アコースティックエミッションによる破壊のその場計測を可能にする装置を開発する。また、軸圧だけでなく、軸変位も制御できる新たな装置を開発する。また、キレート材を用いた炭酸塩透水実験を行い、MgやCaなどの選択的溶脱と、炭酸塩析出を組み合わせたシステムの構築を検討する。 数値モデル:地化学モデリングは、様々な沈み込み帯の温度圧力条件に沿って、沈み込む炭素を考慮した熱力学計算を行う(2023年度)。反応―変形実験での条件での地化学計算、および様々な沈み込み帯に関する計算を行う(2024年以降)。離散要素法計算:マントルウェッジ条件での様々な応力状態における破壊様式を検討する。
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