2022 Fiscal Year Research-status Report
Dialogue and Compassion: Searching for Philosophical Foundations to Build a Community of the Mortals.
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22K00009
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
竹之内 裕文 静岡大学, 未来社会デザイン機構(企画推進本部), 教授 (90374876)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀田 聰子 慶應義塾大学, 健康マネジメント研究科(藤沢), 教授 (70376630)
田中 伸司 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (50207099)
田代 志門 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50548550)
鷹田 佳典 日本赤十字看護大学, さいたま看護学部, 准教授 (30634266)
石田 一裕 浄土宗総合研究所, その他部局等, 専任研究員 (20451031)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 死生 / コミュニティ / 対話 / コンパッション / エンドオブライフ / パブリックヘルス / 地域共生社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢・多死社会において、フレイル(虚弱)や認知症を抱えながら、だれと支え合い、どのように日常生活を営み、人生の終わりを生きたらよいのか。人口動態、疾病構造、世帯構造の変化を背景に、今日の社会はこの大きな問いの前に立たされている。死生の諸課題を分かち合い、助け合うコミュニティ――都市全体から、死にゆく人が属する身近な社会的ネットワークまでを含む――の(再)形成が求められているのだ。この認識のもと本研究は「対話」と「コンパッション」を手がかりに、死生を支え合うコミュニティの思想的拠り所を究明する。 2022(令和4)年度6-9月、研究代表者は客員教授としてグラスゴー大学(英国)に在籍した。本研究課題をめぐって同大学エンドオブライフケア研究グループの同僚たちと対話を重ね、また英国を中心に、広く欧州でデスカフェとコンパッション都市・コミュニティのフィールドワークを実施した。同年9月にはベルギーで開催されたコンパッション都市・コミュニティの国際学会(Public Health Palliative Care International)で研究成果を発表し、本研究課題をとり巻くグローバル/ローカルな状況について最新の知見を得た。国内では、講演やワークショップの機会を利用して、各地でコンパッション都市・コミュニティの胎動を探り、ネットワーキングを進めた。 これと並行して、研究代表者と研究分担者は「対話」の理論と「コンパッション」の思想系譜に関する文献研究を進めた。またパブリックヘルスとエンドオブライフケアの関係およびコンパッション都市・コミュニティの可能性と課題を究明し、論著や講演・研究発表においてその成果を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者と研究分担者は、概ね当初の計画通り、国内外のフィールドワークと各分野の文献研究を着実に実施することができた。12本の論文、9件の学会発表、3件の図書で、研究成果を公表した。 5月には本科研のキックオフ研究会を開催し、本研究チームメンバー全員――研究代表者、研究分担者(5名)、研究協力者(2名)――の参加のもと、研究目的・計画を確認した。10月には第2回研究会を2日間にわたって実施した。初日には『コンパッション都市 公衆衛生と終末期ケアの融合』(アラン・ケレハー著、竹之内裕文・堀田聰子監訳、慶応義塾大学出版会)の合評会(公開)を開催した。二日目には、「コンパッションコミュニティを育てる①」と題して、研究協力者の川村真妃による「幸ハウス」の先駆的な実践をめぐって対話した。2023(令和5年)年6月に開催予定の第3回研究会では、2022年(令和4年)度の研究活動・成果と新年度の研究計画をチーム全体で共有する。
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Strategy for Future Research Activity |
各年度に開催する定例研究会と公開ワークショップで、前年度の研究成果をブラッシュアップし、各年度の学会で報告する。最終年度(2025年度)は研究成果のとりまとめと公表に集中する。研究成果は国際学会(PHPCI)で公表し、共著と単著を1冊ずつ公刊する。 2023(令和5年)年6月に開催予定の第3回研究会では、2022年(令和4年)度の研究活動・成果と新年度の研究計画をチーム全体で共有するとともに、富士市役所高齢者支援課主催の専門職研修会と市民講演会にチームメンバーで登壇する計画である。10月の日本ホスピス・在宅ケア研究会では、コンパッション都市・コミュニティ運動の創始者であるアラン・ケレハーとCC-UK(Compassionate Communities UK)のリーダーであるエマ・ホッジスを招聘し、日本でもコンパッション都市・コミュニティのネットワークを立ち上げる。また11月開催の静岡哲学会のシンポジウムには、研究代表者とともに、研究分担者の田代志門と石田一裕が登壇し、研究成果を公表する予定である。さらに研究代表者は、コンパッションコミュニティのルーツであるインド・ケララ州を訪れ、フィールドワークを実施する予定である。また研究協力者の鷹田佳典と堀田聰子は、それぞれ台湾と北米でコンパッション都市・コミュニティのフィールドワークを実施する計画である。 研究代表者がまちづくりアドバイザーを務める松崎町では、第6次総合計画(2023-32年度)の将来像として「コンパッションタウン松崎」の実現を謳っており、2023(令和5年)年度より、その実現へ向けた活動が本格化する。この地域づくりの実践と連動しながら、本科研の文献研究とフィールドワークを進めていく。
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Causes of Carryover |
欧州でのフィールドワークのため(海外)旅費を計上していたが、所属機関より教員特別研修の機会を与えられたため、欧州渡航と滞在に要する経費については、所属機関の予算をあてることができた。それに伴って(海外)旅費は、ベルギーで開催されたコンパッション都市・コミュニティの国際学会の参加費にのみ費やすことになり、その差額として次年度使用額が生じた。
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