2022 Fiscal Year Research-status Report
A Study on the Development of Buddhist Logic and Epistemology in 8th Century Kashmir
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22K00063
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
石田 尚敬 愛知学院大学, 文学部, 准教授 (80712570)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ダルモーッタラ / 知識論決択注 / アルチャタ / 論証因一滴注 / 仏教論理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、8世紀インド、カシミール地方で活躍したダルモーッタラ(法上)による、仏教論理学の大成者ダルマキールティ(法称)の主著『知識論決択』に対する注釈書『知識論決択注』の第2章(推理論)後半部について、オーストリア科学アカデミーと中国蔵学研究中心との国際プロジェクトにおいて初めて利用可能となったサンスクリット語原典写本を使用し、原典テキスト公開とその解読を目指すものである。同時に、ダルモーッタラに大きな影響を与えたその師、バッタ・アルチャタ(8世紀)が、ダルマキールティ著『論証因一滴』に対して残した注釈書『論証因一滴注』も研究の対象としている。 2022年度は、研究開始年度にあたり、『知識論決択注』及び『論証因一滴注』の原典写本について整理した。特に、『論証因一滴注』について、インド・グジャラート州のジャイナ教僧院において研究代表者が撮影した原典写本(パタン写本)について、欠落したフォリオなどを確認し、全体を整理した。さらに、インド・ベンガル州アジア協会の原典写本、ロンドンの王立アジア協会に保存されたホジソン・コレクションの原典写本について、上記パタン写本との重複箇所などを確認した。その上で、『論証因一滴注』の現行本(サンガヴィ師校訂本)の欠損箇所を優先して解読し、写本翻刻版を準備した。これらの成果は、2023年度の学術大会で発表することとしたい。 また、科学研究費助成金を使用して、韓国・ソウル大学で開催された第19回国際仏教学会、韓国・東国大学校で開催された第6回国際ダルマキールティ学会に参加し、研究発表を行うとともに、本研究計画について国外の研究者と情報交換を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、8世紀インド、カシミール地方で活躍したダルモーッタラ(法上)による、仏教論理学の大成者ダルマキールティ(法称)の主著『知識論決択』に対する注釈書『知識論決択注』の第2章(推理論)後半部と、ダルモーッタラに大きな影響を与えたその師、バッタ・アルチャタ(8世紀)が、ダルマキールティ著『論証因一滴』に対して残した注釈書『論証因一滴注』を研究の対象としている。 『知識論決択注』について、オーストリア科学アカデミーと中国蔵学研究中心との国際プロジェクトにおいて初めて利用可能となったサンスクリット語原典写本の複写について、非認識を扱うフォリオ116b以下の解読を行った。この箇所は、第2章末尾のフォリオ137aまで続く比較的長い節であるが、2023年度までに写本翻刻版の完成を目指している。 一方、『論証因一滴注』の原典写本については、写本の蒐集から開始する必要があったものの、ロンドンの王立アジア協会が所蔵するホジソン・コレクションの原典写本について、王立アジア協会によって撮影されたデータだけでなく、イタリアのスフェッラ教授(Prof. Francesco Sferra)より写本写真データの提供を受けることができた。インド・グジャラート州のジャイナ教僧院に所蔵された写本(パタン写本)については、研究代表者がカラー撮影したデータと、ジャンブヴィジャヤ師によるデジタル化プロジェクトにおいてスキャンされたデータの2種類を研究開始時点で所持しており、残るインド・ベンガル州アジア協会の原典写本についてのみ、モノクロのみのデータが参照可能となっている。ベンガル州アジア協会の原典写本データについてはモノクロであるものの、研究開始初年度において、研究資料の状況は当初の計画以上に整備された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として、ダルモーッタラ(法上)著『知識論決択注』について、オーストリア科学アカデミーと中国蔵学研究中心との国際プロジェクトにおいて初めて利用可能となったサンスクリット語原典写本の複写を用い、非認識を扱う箇所(フォリオ116b-137a)の解読を継続し、2023年度末までに写本翻刻版の完成を目指す。 一方、アルチャタ著『論証因一滴注』の原典写本については、インド・グジャラート州のジャイナ教僧院所蔵写本(パタン写本)、ロンドンの王立アジア協会が所蔵するホジソン・コレクションの原典写本(断片)、インド・ベンガル州アジア協会の原典写本(断片)を用い、解読研究を継続する。特に、2023年度は、現在利用可能となっているサンガヴィ師校訂本(1949年)の欠落箇所について、ホジソン・コレクションの原典写本(断片)を利用して、写本翻刻版、批判校訂版を公表する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症対策として、当初予定した研究会の一部がオンライン開催となったため、次年度使用額が生じた。2023年度は新型コロナウィルス感染症の5類指定に対応し、研究会も対面で開催される見込みであることから、研究会開催にかかる旅費や配布資料の印刷費などに使用する予定である。
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Remarks |
研究代表者が兼任研究員を務める研究所のホームページ(研究成果公開)
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