2023 Fiscal Year Research-status Report
"Collective Memory" and "Scribal Culture" in the Formation of Deuteronomistic History
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22K00080
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
魯 恩碩 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (70527142)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 申命記主義的歴史書 / 書記官文化 / 集合的記憶 / 自然観 / 環境倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年9月29日~10月1日まで国際基督教大学で「Perspective on Nature and Environmental Ethics in the Old Testament」というテーマで国際シンポジウムを開催した。このシンポジウムは、古代イスラエルにおいて「集団的記憶」と「書記官文化」が聖書の著者たちや編集者たちの自然観と世界観にどのような影響を及ぼしたのかを究明するための活発なディスカッションを生み出す、実り多いイベントとなった。本研究代表者も「Give Ear, O Heavens, and I Will Speak: The Non-Human Realm in Deuteronomy」というタイトルで論文を発表した。現在、今回のシンポジウムで学者たちが発表した論文の原稿を集め、一冊の本として出版しようと計画している。なお、本研究代表者は2023年10月に『旧約聖書と環境倫理』という訳書を出版した。この訳書は、キリスト教系出版社として有名な教文館で出版されることになり、広い読者層に読まれることが期待される。Mari Joerstad博士の『The Hebrew Bible and Environmental Ethics: Humans, Nonhumans, and the Living Landscape』の和訳である本書は、申命記と申命記主義的歴史書を中心とする旧約聖書を執筆した古代イスラエルの書記官たちの自然観を網羅的に扱い、人格的な自然観のテキストを次々と抉り出し、古代イスラエルの人々が見ていた、自然と人間が語り合う世界を非常に斬新な観点から描いている。本書の豊な内容に研究代表者は申命記主義的歴史書の形成における「集団的記憶」と「書記官文化」の研究に関連して数多くの示唆点とインスピレーションを得ることができた。本書を和訳し出版することによって、本研究課題が今後目指すべき方向性の一端を明確にすると共に、旧約聖書の「集団的記憶」と「書記官文化」が示す自然観への社会的関心を高めることを望む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「集団的記憶」と「書記官文化」の研究史と研究動向を分析し、独自的な理論的枠組みを形成するための研究を続けており、それが順調に進んでいる。今年度(2024年度)は勤務校である国際基督教大学から1年間、研究期間を取得し、研究に専念するための時間が十分に与えられているため、これまでよりも早く研究成果につなげることが可能になっている。国際学会やシンポジウムなどで培ってきた世界中の研究者たちとの交流とネットワークが本研究のために役立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、共著で1冊の英文研究書を出版するために準備している。Raymond F. Person博士、Eckart Otto博士、Mari Joerstad博士などからすでに原稿を頂いている。聖書学専門の出版社と交渉しており、その出版社は今回の出版プロジェクトに興味を示している。現在原稿は8割程度集まっており、年内の出版を目指している。なお、11月にアメリカのSan Diegoで開催されるSBL Annual Meetingに参加し、最新の研究動向を収集しながら、今後の研究推進方策を調整していく予定である。
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Causes of Carryover |
円安の影響で2023年度に購入しようとしていたBasic 14 Starter CollectionとBDAG/HALOT bundleが2023年度に計画していた予算内では購入できなかったため、2024年度に繰り越しをし、2024年度予算と合わせて購入する予定。
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