2022 Fiscal Year Research-status Report
ミシェル・フーコーの思想と監獄情報グループ(GIP)に関する思想史的・理論的研究
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22K00092
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 嘉幸 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (90420075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
箱田 徹 天理大学, 人間学部, 准教授 (40570156)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ミシェル・フーコー / ポスト68年 / 哲学 / 社会理論 / 社会運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
監獄情報グループ(以下GIP)とは、ミシェル・フーコー、ジャン=マリー・ドムナック、ピエール・ヴィダル=ナケによって1971年2月に設立され、1972年末まで活動した社会運動である。それは、収監者たち自身に監獄の「耐え難い」状況を発言させ、それを社会に知らしめ、同時に、監獄システムに関わる知識人、専門家を動員することを目的としていた。この運動には、ジル・ドゥルーズ、ダニエル・ドゥフェール、ダニエル・ランシエール、ジャック=アラン・ミレール、ジャック・ドンズロ、エレーヌ・シクスーなど、多くの知識人が関与していた。当時はポスト68年の時期に当たり、社会運動が盛んに展開されると同時に、政治活動への警察の取り締まりが厳格化されていた時期であり、そのため、学生や若者の活動家たちが大量に逮捕され、投獄されていた。彼らが大量に監獄に送られることで、それまで知られていなかった、フランスの監獄システムの暴力性、矛盾、機能不全などが社会全体に暴露されていったのである。GIPの活動は、政治囚と普通囚を連帯させ、監獄におけるそれら「耐え難いもの」を社会に知らしめることを目的として開始され、監獄における大量の囚人アンケートを出発点として、その後頻発する監獄暴動の情報収集に積極的に関与していく。今年度は、GIPが発行していた冊子『耐え難いもの』の読解、分析を通じて、GIPとフーコー思想との関係を考察した(本書は日本語に翻訳、刊行予定)。関連成果として Power and Resistance: Foucault, Deleuze, Derrida, Althusser(Verso)、『ミシェル・フーコー』(講談社)を出版した。日本におけるGIPと同様の活動として監獄人権センターがあるが、その代表の海渡雄一弁護士をフーコー研究フォーラムに招聘し、監獄人権センターの歴史と現状についてご講演いただいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はフーコー研究フォーラムと共同で研究活動を行っており、公開研究会の開催を通じて研究成果を社会に還元している。今後も、そのような方針で研究活動を続行していく。
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Strategy for Future Research Activity |
GIPが発行していた冊子『耐え難いもの』の翻訳、刊行を通じて、研究成果を社会に還元する予定である。また、引き続きフーコー研究フォーラムを通じた研究成果の公開も行っていく。
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Causes of Carryover |
本年度はすべての研究会をオンラインで行なったため、次年度使用額が生じた。来年度以降、成果出版のために使用する予定。
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