2023 Fiscal Year Research-status Report
Transcendence and Dialogue - an approach to the Idea of the Good in Plato's Politeia -
Project/Area Number |
22K00097
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
田中 伸司 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (50207099)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | プラトン / 超越 / 対話 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、プラトン『国家』中心巻において示される「対話による超越的なものへの接近」という方法論の内実と有効性を明らかにすることである。 計画の第二年度(令和5年度)として、『国家』中心巻の三つの比ゆのうち「太陽の比ゆ」と「線分の比ゆ」について、先行研究の検証を行いつつ、テクストの分析を進めた。これらのテクストはイデア論理解において最重要とされる箇所であるが、比ゆであるがゆえに曖昧なところがあり、比ゆが進行していくに従って疑問に思われるところが積み重なっていくように見える。実際、太陽の比ゆと線分の比ゆにはそれぞれ難点が指摘されており、三つ目の比ゆである洞窟のイデアは「奇妙な比ゆ」(515a4)として提示されている。第二年度としての課題である「太陽の比ゆ」と「線分の比ゆ」の分析自体は順調に進んだものの、その過程で明らかとなった先行研究間の対立に関しては、本研究の方向性を十分な確証をもって提示するところまでは至らなかった。ここで言う先行研究間の対立とは、大まかにえば、善のイデアが他のイデアと同様にさまざまな善いもののイデアであるという見解と、「仮設のない始原」として(『パイドン』でのヒュポテシスという位置づけとは異なった仕方で)善のイデアが方法論的な基盤となっているとする見解との間の相違であり、これらの見解の異なりに応じて善のイデアの理解が異なっていくことを指している。すなわち、それはイデア論をプラトンがどのように考えていたかの理解の異なりに他ならず、善のイデアの位置づけの重要性が改めて確認された。本研究では最終的には、三つの比ゆの重なりを分析することで一定の解を見いだしたいと考えている。令和6年度においては、以上の研究成果を論文としてまとめ、第三番目の比ゆである「洞窟の比ゆ」の分析へと進めていきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は令和5年度中に、研究論文をもう一本書き上げる予定であった。しかし、令和5年4月より勤務校において学部長を拝命したため、研究エフォートを相当程度抑制せざるを得なくなり、研究の進捗に遅れが生じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
学部長の任期は令和7年3月までであるので、それまでには研究論文を一つまとめることを目標としている。ここまでに書き上げた論文を基礎として、本研究の最終年度において第三番目の分析対象である「洞窟の比ゆ」の研究を取りまとめることが可能となり、本研究後に予定している学術図書((仮)『超越と対話―プラトン『国家』研究』)を上梓できると、考えている。
|
Research Products
(1 results)