2023 Fiscal Year Research-status Report
思想(史)的課題としての「家族」──脱オイディプス化の半世紀を見つめ直す
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22K00100
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
立木 康介 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70314250)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 家族 / 非(もしくは脱)エディプス化 / 性的多様性 / ケア / 同性婚 / トランスジェンダー / 両性性 / 精神分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヨーロッパにおける「家族思想」の転回点を印づけるように思われるドゥルーズ&ガタリの『アンティオイディプス』(1972)を下敷きに、その出版からの半世紀に欧米を中心に巻き起こった「家族」形態の急速な多様化(そのアウトラインは「脱オイディプス化」と呼びうる)と、それがもたらす「家族」概念の変化を、ひとつの思想的課題と捉え、精神分析を基軸とする思想史的パースペクティヴのもとで、21世紀の市民社会にふさわしい「家族」の再定義への道を拓くことを目的とする本研究は、1/ 性的アナーキズムとしての精神分析理論(これは本研究全体を方向づける立場でもある)、2/ 家族(への)回帰の論理の解析、3/ 「ケア」理論における家族論の可能性の追求、4/ 「同性婚」問題のラディカルな解明、5/ モノガミーの歴史=文化=心理的根拠を探る試み、というサブテーマに沿って、現代文明における「家族」の変容と、それがヒューマニティにもたらしうる帰結を考察する。2023年度は、このうち、1から4について、同時並行的に調査・検討を進め、とりわけ1および2との関連では、折よく訪れた著述(テレビ番組と連携した入門書の執筆)の機会を利用して、本研究によって深められた見解(精神分析が人間主体に想定する性的素質の多様性を、性自認の問いにまで拡張的に適用することの必然性)を広く一般社会に向けて表明することができた。また、前年度に引き続き、京都大学人文科学研究所の共同研究「家族と愛の研究」(冨山一郎班長)と連携し、そこから得られる諸情報を本研究の資料コーパスに組み込むことができた。それはとりもなおさず、本研究の充実に不可欠である学際的視点(歴史学、社会学、法学、心理学、生殖医療研究、児童文学研究など)を、本研究全体に行きわたらせるプロセスでもあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特に問題はない。ただし、上記の5つのサブテーマをめぐる研究・調査を均等な速度で進めることはできていない。また、折からの急速な円安により、海外調査の計画見直しを余儀なくされている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、上記の5つのサブテーマに沿って、資料収集・調査・考察を進める。同時に、R6年度は計画上の最終年度となるため、本研究から得られたデータ・情報を構造化しつつ、プロジェクト全体をまとめる作業に入りたい。
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Causes of Carryover |
急速な円安の進行により、従来と同じ経済感覚で海外調査のプログラムを組むことにリスクが生じ、計画の練り直しが必要になった。具体的には、R5年度及びR6年度に一度ずつ予定していた海外調査を、R6年度の一回の出張で行えるようプログラムを見直す検討を行った。その結果、R5年度の執行額に余裕が生まれたが、それはR6年度の海外出張費に振り向けられる。
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