2022 Fiscal Year Research-status Report
近現代日本・台湾の舞台性大衆娯楽の総合的研究と東アジア文化圏研究の国際的拠点拡充
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22K00136
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
細井 尚子 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 教授 (40219184)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 隆基 立教大学, 江戸川乱歩記念大衆文化研究センター, 助教 (00770851)
中野 正昭 淑徳大学, 人文学部, 教授 (40409727)
輪島 裕介 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 教授 (50609500)
宮 信明 京都芸術大学, 芸術学部, 准教授 (50636032)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 舞台性大衆娯楽 / 東アジア / 大衆性 / グローバル化 / グローカル化 / 翻案 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度にあたる22年度は当初の研究計画通り、「近代化・グローバル化により形成されたグローカル化の果実を分析し、優位に立つ文化コードの翻案域に留まるのか否かを検証」した。研究分担者、研究協力者、若手育成のための院生及び対象分野を大衆娯楽とする若手研究者16名が、自身の研究対象について検討した成果を、2023年1月7・8日に開催した国際シンポジウム「2022 東アジア大衆演劇国際学術シンポジウム―グローカル化を巡って2022 東亞洲戲劇國際學術研討會―全球在地化的新思維」で発表した。発表内容は演劇・映画・音楽範疇の芸態をサンプルに、時間的・空間的変容の検討から問題に取り組む研究を主としたが、発表者ではカバーできないレコード関連について、台湾大学の山内文登音楽学研究所所長・教授に基調講演「植民地期朝鮮・台湾のレコード産業と歌謡――帝国的連環の視座から(殖民地朝鮮與臺灣的唱片工業與歌謠:從帝國連環談起)」をお願いした。観劇行為においては観客の身体が優位に立つ文化コードに変わることで(すなわち翻訳された身体)、優位に立つ文化コードに沿った観劇行為が実体化することが確認されたが、演じるもの・演じ方については翻案域と翻訳域はグラデーションであり、グラデーションの中にローカル化が見られるのではという仮説が想定された。 22年度のメンバー個々の活動として特記すべきは、研究分担者の中野正昭(淑徳大学教授)の『ローシー・オペラと浅草オペラ――大正期翻訳オペラの興行・上演・演劇性――』(森話社、22年7月)』が令和4年度(第73回)芸術選奨文部科学大臣賞(評論等部門)の受賞である(23年3月1日公表)。舞台性大衆娯楽を扱った著書の受賞は初めてであり、従来比較的低い評価に置かれていた当該範疇の芸態及び研究にとって、ひとつの大きな転機と思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来の計画では22年度は上半期に国際論壇、下半期に国際シンポジウムを開催する予定だったが、国際論壇の開催をとりやめた。主として開催準備に着手する4月期に、主催する台北芸術大学の所在地である台湾でCOVID-19の感染状況が悪化し、開催予定の7月期の状況が読めず、また、台北芸術大学の中心メンバーが学部・大学の要職にあり、教育面での感染防止対策対応の中心的役割を担うなど、COVID-19関連事情による。しかしながらメンバー個々は当初の予定通り、各自で研究活動を継続、研究代表の細井は22年度海外研究休暇を得て、台北に1年間滞在、台北芸術大学・台湾大学をホームに教育・研究活動を行った。 22年度の研究成果の発表・共有・検討の場として23年1月7・8日に国際シンポジウムを開催した。当該シンポジウムは本研究課題及び立教大学アジア地域研究所が主催、台北芸術大学・東アジア大衆演劇研究会共催だが、細井が台北在住だったため、発表者・コメンテーター向けのリアル会場は台北芸術大学に設け、その他はオンライン参加となった。当該シンポジウムの論文集『東アジアにおける舞台性大衆娯楽のグローカル化を巡って 東亞大衆藝術型態的全球在地化新思維』(一部論文はシンポジウムを経て改稿)は立教大学リポジトリで23年3月27日公開、現時点で整備中の台北芸術大学リポジトリでは23年6月に公開予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度は22年度の成果を踏まえ、当初の研究計画通り、「グローカル化の果実を近代化・グローバル化に分け、日本・台湾の複数の同類芸態を比較し、バリエーションの多様性は文化の多様性と置換可能かを検証する」ことに取り組む。 20年度より研究活動面でも大きな制約を受けてきたCOVID-19の位置づけが、台湾では5月1日から感染防止対策指揮中心が再編・降級し、防疫常態化に移行、WHOは5月6日にCOVID-19の緊急事態宣言終了を発表し、日本では5月8日から5類に移行するなど、23年度は研究環境も19年度の状態に復すると考えられる。この間、控えてきた当事者へのインタビューや資料収集、研究交流などが、各自で感染対策を継続しつつも復調可能と思われるため、当初の計画通り、7月に国際論壇、12月に国際シンポジウムを開催する予定である。 国際論壇は「東アジア文化圏の舞台性大衆娯楽ー当事者の声・言葉から」(立教大学アジア地域研究所主催、台北芸術大学・東アジア大衆演劇研究会共催)と題し、経費面でのリアル開催の可能性を探るが困難な場合はオンライン開催とする。国際シンポジウムは「2023東亞大衆戲劇國際學術研討會―大衆演劇的全球化旅程(大衆演劇のグローバル化の旅路)」(台北芸術大学・東アジア大衆演劇研究会主催、本研究課題及び立教大学アジア地域研究所共催)と題し、台北芸術大学を会場とするリアル開催を想定している。また、当該シンポジウムの論文集は年度末に立教大学・台北芸術大学のリポジトリで公開する予定である。
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Causes of Carryover |
国際シンポジウムのため、日本語論文の翻訳を4人(台湾人3名・日本人1名)の翻訳者に依頼した。日本円と台湾ドルとの交換レートが悪く、国際シンポジウムのための翻訳費用が膨張し、22年度科研費では不足することが判明した。事務手続きの関係で22年度執行ができなかった翻訳費用の一部を23年度に翻訳代として支出する予定である
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Research Products
(39 results)