2023 Fiscal Year Research-status Report
僧形の文学史の再構築にむけた正徹と心敬の文学の総合的研究
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22K00297
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
伊藤 伸江 愛知県立大学, 日本文化学部, 教授 (30259311)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 心敬 / 今川範政 / 今川了俊 / 正徹 / 伊勢物語 / 物語取 / 藤原定家 / 源氏物語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、複数の論で、心敬の作歌・作句理論が源氏物語注釈につながっていく思想的深まりを論じて、後世の源氏物語注釈書の様相に及ぶと共に、今川範政の和歌と源氏物語に関する事蹟も検討した。これらは本年度刊行の著書『室町期和歌連歌の研究』の中核をなす理論である。 心敬については、特に、自歌注・自句注にある先人の和歌を「うらやむ」とする表現から、「心の艶」こそが最上の境地であり、『毎月抄』が主張する有心体につながるものであること、さらに冷泉派歌人が着目した和歌の初五文字の理論を連歌の発句に応用することで、景物からはるか離れた空間をも同時に描く自然描写の可能性を広げたことをまず論じている。 さらに、『難題百首』の論で、心敬は歌の難題の処理に『伊勢物語』八十段の歌を使用しており、詞書がなけれぱ不完全な和歌を使うという点で、心敬が連歌の作法を和歌に持ち込んで臆することがない点を示した。心敬の指導と考えられる連歌寄合書『連歌作法』中の、『伊勢物語』八十段の当該歌の寄合は、二条派歌人である宗祇と冷泉派に影響された心敬の把握の相違にも繋がっていき、『源氏物語』の和歌や地の文での時の把握の曖昧さに対する態度の言説として、後の連歌師の源氏注の中に入り込んだことも新しく示しえた。 他方、正徹の近しい弟子であった今川範政は、万葉集や京極派和歌などを幅広く書写した実績があり、『源氏物語』の読解書『源氏物語提要』も著している。彼の『源氏物語』読解が冷泉派歌人として歌論用語「余情」理解の上に立ったものであること、物語の進行する時間の流れを「余情」の観点から読み解き、文学的な発展を成していることも論じた。こうした範政の「余情」は、当然ながら今川了俊の思想と『源氏物語』理解と繋がっており、さらにそれは『徒然草』の物語的章段(三十二段)の時間と視線のあり方とにつながることも考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標とする、正徹・心敬の多様な文学表現の読解の進展、を順調になしていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
心敬と今川範政に関して、両者の和歌・連歌と深く関わる『源氏物語』の享受と読解を新しい方向から捉え得たので、さらに深く掘り下げていく。併せて、正徹の立ち位置を、源氏物語研究にも目を配りながら考察していく。その上で、いずれにも強く影響している『徒然草』の享受をも鑑みつつ、「遁世者」の文学という視点から文学史的な把握をしなおしていく。
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Causes of Carryover |
研究開始年度における感染症の影響から、初年度使用額と今年度使用額が計画よりも少なくなった。今後、研究の進展に基づき旅費使用額などの増加で平常に復する予定。
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Research Products
(1 results)