2023 Fiscal Year Research-status Report
文化資源による日本神話受容史の構築―戦前絵葉書にみられる意匠を中心に―
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22K00300
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
小林 真美 東京理科大学, 教養教育研究院神楽坂キャンパス教養部, 准教授 (30548144)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 古事記 / 日本書紀 / 風土記 / 受容史 / 文化資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の研究を実施するに際しては、本課題の研究における二年目に当たることから、昨年度の中心課題であった写本・版本等の掲載経緯と受容に関する研究に、引き続き取り組むとともに、予備研究として、『古事記』『日本書紀』に登場する人物を題材とする文化資源の調査についても、継続して情報収集を行なった。 前者に関しては、昨年度までの研究成果を踏まえ、現在は、当該写本の絵葉書の発行元などにおける実地調査を残すのみとしており、およそ、その全容を、明らかにしうる状況となっている。 また、後者に関しては、東京軍事教育會によって発行された「武士道はがき」シリーズにおいて、『日本書紀』欽明天皇二十三年七月是月条に登場する、調吉士伊企儺を描いた作品が入っており、この現物を入手することもできた。よって、これを基点として、子・舅子や妻・大葉子も交えた、調吉士伊企儺親子に関する受容について、言及のなされた初期資料である『釈日本紀』から、第二次世界大戦後の社会状況の変化によって、関心を持たれなくなり、埋もれた存在に至るまでとなったことを、通史的に考察した。 結果として、江戸期における『日本書紀』の版本刊行や、『大日本史』などの修史作業が、伊企儺父子の事績を知らしめる役割を担ったこと、特に後者においては、彼らを高く賞賛した言辞があることを理解した。加えて、江戸時代末期まで無名であった大葉子の名が知れわたった契機として、滝沢馬琴『松浦佐用媛石魂録』が重要な役割を果たしたことなども、明らかにした。なお、本研究の成果に関しては、次年度に、研究雑誌において掲載・公表される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度においては、真福寺寶生院や多神社(多坐弥志理都比古神社)など、『古事記』写本に関係する各所における実地調査を行う予定を立てていたが、昨年度に引き続き、校務の予期し得ぬ超過もあって、研究時間の捻出や、遠方への外出が難しく、達成し得ずにいる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度には、これまでかなわずにいた、真福寺寶生院や多神社(多坐弥志理都比古神社)を中心に、遠方における実地調査を交えつつ、別の団体が発行する『古事記』写本に関する文化資源調査を、重点的に行うこととする。 また、関連資料の収集に関しても、より効率的な方法にて取り組むことができるよう、入念に計画を練ることとする。
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Causes of Carryover |
遠方への調査に赴くことができなかったため。 本年度は、日帰りによる方法も含め、実地調査に取り組むこととする。
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