2022 Fiscal Year Research-status Report
二次創作を視座とした日本近代小説の再検討―戦後の視聴覚メディアを中心に―
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22K00307
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
西川 貴子 同志社大学, 文学部, 教授 (20388036)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日高 佳紀 奈良教育大学, 国語教育講座, 教授 (00335465)
大橋 崇行 成蹊大学, 文学部, 准教授 (00708597)
武内 佳代 日本大学, 文理学部, 教授 (40334560)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 日本文学 / アダプテーション / 映画 / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は基礎的資料の収集・調査に特に力を入れ、以下の各項目の通り、研究を進め、その進捗を報告(計8回)した。 1、国立映画アーカイブや放送ライブラリー、国立国会図書館等をはじめとする、各館所蔵の貴重資料を収集。特に国立映画アーカイブでは、研究代表者と研究分担者および関連の研究者を交えて、『感傷夫人』(堀池清監督/1956年・伊藤整原作)、『白い山脈』(今村貞男監督/1956年・井伏鱒二解説文)、『大菩薩峠 鈴鹿山の巻 壬生島原の巻』(稲垣浩監督/1936年・中里介山原作)、『大菩薩峠 第一部(甲源一刀流)』(渡辺邦男監督/1953年)、『こつまなんきん』(酒井辰雄監督/1960年・今東光原作)、『河内フーテン族』(千葉泰樹監督/1968年・今東光原作)などの1950-60年代の映画について、上映会とそれに基づいた意見交換・報告を行ない、基礎的な資料を共有した。 2、研究代表者および研究分担者と戦後の文学・映画研究について詳しい関連の研究者を招いての研究報告会および意見交換会をおこない、知見を深めた。具体的な内容としては、既に読書会において輪読し共有していたリンダ・ハッチオン『アダプテーションの理論』(2006、邦訳2012、晃洋社)やジェラール・ジュネット『パランプセスト─第二次の文学』(1982、邦訳1995、水声社)の理論を再確認した上で、まず1950-60年代の映画の概括的な知識を共有し、その上で、谷崎潤一郎『細雪』、幸田文『流れる』、吉川英治『宮本武蔵』、伊藤整『氾濫』、中里介山『大菩薩峠』などの作品を原作とする1950-60年代の映画に関する研究報告会および意見交換会を行なった。また、1950年代の映画における原爆表象と手記との関連についても報告と意見交換を行なった。 3、その他、本年度の実績として、単著(1)、共編著(1)、論文(1)がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本の小説を原作とする、1950-60年代の視聴覚メディアは膨大な数があるため、まずはその概観を掴んだ上で、さらに個別にテーマを絞るべく、本年度は、とにかく資料の調査と整理をし、情報を共有することを心がけた。 また、そのためにも、国立映画アーカイブで、貴重フィルムの上映会を開くなどした。そのため、調査の方向性や整理ができたといえる。研究報告会も開催し、毎回、関連分野の識者からの助言ももらうことができ、各人がワークショップ等で報告できるようなテーマや方向性を固めつつあるので、おおむね順調に進展しているといえるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
戦後の映画およびラジオと文学との相互関連について研究を進める中で、戦後メディアに関する専門的かつ総合的な調査をさらに充実させる必要があることを再認識した。そこで、2023年度より、戦後メディアに関する研究を専門としており、『1950年代――「記録」の時代 』(2010、河出ブックス)をはじめ、既に多くの成果を有していて、戦後メディアに関する専門的かつ総合的な知見を有する、鳥羽耕史(早稲田大学)を新しく研究分担者として追加し、戦後の映画およびラジオと文学との相互関連についての体系的な調査を充実した形で進められるようにした。 2023年度は、国立映画アーカイブでの映像資料や放送ライブラリーにおける聴覚資料をはじめとする調査を引き続き行い、資料を総合的に分析することに力を注ぐ。 また、2023年度は、研究成果の途中報告の一端として、ゲストスピーカを招いての報告会を行ない、ゲストスピーカーの意見も取り入れながら、さらに研究の充実を図るつもりである。
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Causes of Carryover |
本年度は、公開ワークショップ等は行なわず、基礎調査に重点を置き研究を進めた。そのため、ゲストスピーカーの謝金や会場費等は生じなかった。これらのことから、予定よりも費用はかからなかった。 ただ、基礎的な調査や研究を進める中で、戦後の映画およびラジオと文学との相互関連について考える上では、戦後メディアに関する専門的かつ総合的な調査を充実させる必要があることを再認識することになった。そのため、2023年度より、戦後メディアに関する研究を専門としており、『1950年代――「記録」の時代 』(2010、河出ブックス)等をはじめ、既に多くの成果を有していて、戦後メディアに関する専門的かつ総合的な知見を有する、鳥羽耕史(早稲田大学)を新しく研究分担者として追加することにした。その上で、戦後の映画およびラジオと文学との相互関連についての研究をさらに充実した形で進められるようにした。このように、2023年度より追加した新たな分担者の分担金として使用する予定である。 また、2023年度は、ゲストスピーカも招き、研究の充実を図るつもりである。
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Research Products
(3 results)