2023 Fiscal Year Research-status Report
1920~30年代における新聞小説の展開に関する実証的研究
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22K00308
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
関 肇 関西大学, 文学部, 教授 (70236074)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 新聞小説 / アダプテーション / 演劇 / 映画 / 挿絵 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画にしたがい、論文1本を発表し、口頭発表を1回行った。 論文「尾崎士郎『人生劇場』(残侠篇)のアダプテーション―昭和戦前期の諸相」(『関西大学文学論集』73巻4号)は、「残侠篇」を最初に演劇化した若手新派の研究劇団・裸座の「続々人生劇場」(小出英男脚色、松居桃多郎演出)、新国劇の「人生劇場「吉良常」篇」(高田保脚色、上泉秀信演出)、日活多摩川により映画化された「人生劇場 残侠篇」(千葉泰樹脚色・監督)、井上正夫を中心とする新派合同劇「人生劇場 吉良常―新版「残侠篇」」(村山知義脚色・演出)について、成立の経緯、原作との比較、演劇・映画の特徴、同時代の評価、一般観客の反応などを検討した。新国劇と日活映画は、ともに圧倒的な好評を博した。それにより講談、レコード、ラジオ小説、軽演劇、浪曲レコードなどへと「残侠篇」のアダプテーションを拡張させることになり、「青春篇」をしのぐ大きな人気を獲得したことによって、現在にいたる『人生劇場』の任侠の物語というイメージが形成されたことを明らかにした。 口頭発表「尾崎士郎と中川一政―「人生劇場」の挿絵をめぐって」(2023年度東西学術研究所総合シンポジウム)では、中川一政が描いた新聞小説挿絵の中で「人生劇場」が占める位置を確認し、「人生劇場」との関わりが単行本の出版、演劇の舞台装置などにも及ぶことを見たうえで、尾崎士郎の挿絵評、中川一政の挿絵観を参照して、「人生劇場」の挿絵の具体的な分析を行った。発表で取りあげた事例は多くないが、今後、さらに考察を重ね、論文化することにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『人生劇場』「残侠篇」の演劇化については、裸座および新派合同劇の警視庁検閲台本を早稲田大学演劇博物館が所蔵しており、それを閲覧することにより、上演の中味を検討することが可能になった。また、新国劇の機関誌で上演時の情報を得られたことも大きかった。閲覧の便宜をはかってくださった演劇博物館に心より感謝したい。 中川一政の挿絵については、本文との対応が明らかでなく、何を描いたのか分かりにくいものも若干あるが、そのいくつかについては関西大学東西学術研究所におけるシンポジウムの場で、参加者から有益な示唆を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、大正~昭和戦前の新聞小説についての基礎的なデータ収集を行っていく。これに関しては、高木健夫編『新聞小説史年表』が貴重な労作であるが、そこに遺漏のあるデータを整理し、研究基盤づくりにつとめたい。
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Causes of Carryover |
2023年度は、大正~昭和戦前の新聞小説についての基礎的なデータ収集を、主に学内でおこなったため、旅費の支出が予定よりも少ない結果となった。 次年度の前半には、学内での作業が一段落する見込みであり、夏季休業期間などを利用して、日本近代文学館・国立国会図書館などに資料調査に行く費用にあてることにしたい。
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Research Products
(2 results)