2023 Fiscal Year Research-status Report
Japanese-German Comparison of Postwar Literature: An Empirical Study of the People's Front Movement and NOMA Hiroshi
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22K00315
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
尾西 康充 三重大学, 人文学部, 教授 (70274032)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 野間宏 / マルクス主義 / 親鸞 / 戦後文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
野間宏の文学作品におけるエネルギーに満ちた〝悪〟の表象は、中世史学のパラダイムチェンジを果たした網野善彦が意欲的に論説を展開した分野であった。網野によれば〝悪〟とは、平安後期において「粗野で荒々しく、人の力ではたやすく統御し難い行為」と結びつけて使われていた。たとえば漁撈や狩猟などの殺生、濫妨や狼藉、殺人、博打や双六、商売や金融によって利益を得る行為や〝穢れ〟―非人・犬神人・山臥・河原者―などであったが、一三世紀後半以降、宋銭の大量な流入によって「貨幣の魔力は社会を広くとらえ、「悪」と結びついた荒々しい力を社会の表面に噴出」させるようになったという。社会の転換期において、親鸞や一遍は、悪の世界に肯定的な評価を与え、商工業者や金融業者、さらに被差別民や博打、遊女まで支持者を拡げ、後醍醐天皇は北条氏の強権政治に反発する商人や金融業者、廻船人のネットワークを組織して「建武の新政」―内裏には商人や非人と呼ばれた人びとが出入りした―を導いたとするのである。 「よしあしの文字をもしらぬひとはみな/まことのこころなりけるを/善悪の字しりがおは/おおそらごとのかたちなり」(『正像末和讃』)という親鸞の言葉もまた、生死罪濁の群萌に向って無分別智の証、すなわち〝善悪の彼岸〟を指し示したメッセージである。 今年度の研究は、野間の代表的な文学作品を読み解きながら、野間がその作家生涯をかけて目指した理想を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した通り、研究は進捗している。調査した成果は論文や著書の公刊によって明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に向けて、収集した資料を再整理して、それらを論文の形で順次発表する。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症の影響から、学内での積み残しの業務が発生し、海外渡航ができなかったため。次年度は最終年度に当たるため、学会発表や論文発表など成果報告をおこなうために予算を支出する。
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Research Products
(2 results)