2023 Fiscal Year Research-status Report
中世私撰集所収万葉歌を対象とした散佚非仙覚本万葉集の復元の研究
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22K00318
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
樋口 百合子 奈良女子大学, 大和・紀伊半島学研究所, 協力研究員 (90625493)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 歌枕名寄 / 勅撰名所和歌要抄 / 名所歌枕 / 日本大学文理学部蔵『歌枕名寄』 / 仙覚校訂本 / 非仙覚本 / 改訓 / 新点 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中世類題和歌集に所収された万葉歌(特に長歌・東歌を中心に)を調査し、散佚非仙覚本のありようを検討するものである。 二年度にあたる今年度は、徐々に文献所蔵機関における調査や研究会も実施可能となったので、いくつかの調査を行い、それに伴う論文を発表し、研究会に出席した。 初年度に続いて、長歌の数は少ないが、『歌枕名寄』についで漢字本文表記の多い『勅撰名所和歌要抄』について唯一の完本である内閣文庫本を調査した。成立は14世紀半ば頃であり、仙覚校訂本が都で受容されていく時期と重なる。所収万葉歌は1036首、そのうち仙覚新点歌は2首、いずれも仙覚校訂本を受容していない。そのうち1首は次点系であり、現在の訓とほぼ変わらない貴重な訓を保有していたことを見出した。次に島原松平文庫所蔵の『名所歌枕』(島原本)の調査を終え、宮内庁書陵部蔵本(甲類)を翻刻した『名所歌枕伝能因法師撰の本文の研究』(井上宗雄他 笠間書院 1986年)に乙類の島原本を加えた本文を用いて所収万葉歌の調査を行った。所収万葉歌は1098首、新点歌は60首、そのうち新点歌は16首あり、仙覚校訂本を受容していると推定されるが、その訓は仙覚校訂本(西本願寺本)と一致しない訓を多数含むということを見出した。ほかに昨年に続き、日本大学図書館文理学部分館蔵『歌枕名寄』を調査し論文に纏めた『汲古』84号 2023年12月)。仙覚校訂本を受容していないこと、『歌枕名寄』他写本に見られない鴨長明との関わりが存在し(これは(明治大学蔵『歌枕名寄』に同じ)、長明が鎌倉紀行記を記した可能性があることなどが判明した。さらに『歌枕名寄』の伝本は増補、抄出、摘出などの特色がみられることを明らかにした。 さらに研究成果公開促進費に採択され、『『歌枕名寄』継承と変遷』を上梓し、これまでの研究成果を学会の共有とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ココロナ禍のための初年度の遅れが影響を及ぼし、さらに『『歌枕名寄』継承と変遷』 (研究成果公開促進費採択)の出版準備(原稿の纏め、校正作業など)のため、調査や考察がやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
推進方策に変更はない。次年度は調査中の『名所歌枕』や、『勅撰名所和歌要抄』についてさらに調査を進め、『万葉詞』他の歌集も加え、仙覚校訂本が都で受容されていく時代の前後に成立した歌集中の仙覚の受容と流布について調査し、非仙覚本の痕跡を洗い出し、纏める。その上で仙覚本が浸透していく過程で、非仙覚本の受容と流布について考察する予定である。 さらに『歌枕名寄』については九州大学支子文庫蔵『歌枕名寄』について調査考察を行い、非仙覚本の残存状況について論文に纏める予定である。
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Causes of Carryover |
二年度の前半はコロナ禍の影響がまだ残っているため、文献調査が予定通りに進まなかったこと、年度の後半は研究成果公開促進費に採択され、原稿の纏めや校正作業のため、調査や学会への出席に支障をきたしたことなどにより、旅費やそれに関わる書籍の購入を行わなかったためである。残余金はは初年度・二年度に見送った調査を行い、さらに学会・研究会などに発表を含め参加し、それに関わる書籍購入や物品購入などに割り当てる計画をしている。
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Research Products
(2 results)