2022 Fiscal Year Research-status Report
芥川龍之介の直筆資料所蔵情報を核とする総合データベースの構築と活用に関する研究
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22K00322
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
庄司 達也 横浜市立大学, 国際教養学部(教養学系), 教授 (60275998)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥野 久美子 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 教授 (50378494)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 芥川龍之介 / 直筆資料 / 草稿研究 / 資料修復 / 映像資料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、①「芥川龍之介関連直筆資料」の所蔵に関わるデータベースの構築、②こおりやま文学の森資料館蔵「久米正雄関連映像資料」の修復、③藤沢市文書館蔵「芥川龍之介関連直筆資料」の修復という3つの課題を柱として設定している。 2022年度は、コロナ災禍に見舞われた中にあり、①「芥川龍之介関連直筆資料」のデータベースの構築に関わる調査を計画通りに進めることが困難となった。そのため、既に入力を終えているデータのチェックに重きを置いた計画に変更し、実施した。 ②こおりやま文学の森資料館蔵「久米正雄関連映像資料」の修復については、同資料を所蔵する福島県郡山市の2022年度予算として修復事業が認められたことにより、修復作業を「当初の予定の通りに同市との協働として行い、相応の成果をあげた。今回は以前に行った修復作業の結果とは異なり、新たな映像資料の発見にはつながらなかったが、当該資料に関する修復技術の向上ということが大きく働き、約30年以前に修復して公開されているフィルムに比して、精細な映像を得ることが叶った。このことにより、本資料に対する調査、分析活動に大きく貢献することとなった。 ③藤沢市文書館蔵「芥川龍之介関連直筆資料」の修復事業は、当該資料の旧蔵者が遭遇した災禍により被災した資料群に対しての早期の対応が待たれていたことがらである。この度、藤沢市と横浜市立大学との間で研究協力の協定を結び、複数年にわたる計画を立て、修復事業を展開することとなった。本年度は3か年計画の1年目として実施したが、このことにより、100点の資料の閲覧、公開が可能となった。なお、本計画が日本放送協会(NHK)のテレビ、ラジオでのニュース報道に加え、新聞各社の紙面に於いても紹介されたことで、直筆資料の修復の必要性とその有用性について一般にも広く伝えることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「芥川龍之介関連直筆資料」に関するデータベースの構築の作業が、当初の計画から遅れている。学生アルバイトなどの協力を得て、各種目録などの調査を行い、データの収集を行う予定であったが、コロナ災禍に起因する政府による行動制限などの影響を受け、計画の見直しが迫られたことが主たる要因である。 資料修復に関する事業計画は、自治体や文学館などの関係機関の協力を受けながら、当初の予定の通りに進み、相応の成果を残しているといえる。しかしながら、その一方で、コロナ災禍の終息が見出せない中、遠方への調査、グループでの調査活動に積極的に踏み込めない状況もあり、当初の計画の通りには進められていないのが実情である。
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Strategy for Future Research Activity |
「芥川龍之介関連直筆資料」に関するデータベースの構築については、既に基本的な入力作業の7割程度は終えている。今後は、多くの文学館、資料館がネット上で公開している情報などにも積極的にアクセスし、より精度の高いデータベースの構築に向けて作業を進めてゆく。 また、こおりやま文学の森資料館(福島県郡山市)が所蔵する、久米正雄関連の映像フィルムの修復事業、並びに、藤沢市文書館(神奈川県藤沢市)が所蔵する芥川龍之介関連直筆資料の修復事業に関しては、両自治体の協力を得て2023年度も継続することになっている。この点についての大きな変更は無い。 今年度、新たに加わった事業計画に、田端文士村記念館(東京都北区)が所蔵する「中野妙子ノート」の調査と分析がある。このノートは、本研究課題がその主たる対象としている芥川龍之介の配偶者である文子への聞き書きをつづった『随想 芥川龍之介』(筑摩書房、1975)のための取材ノートである。所蔵館を管轄する北区文化振興財団と横浜市立大学との間で研究協力に関する「覚書」を交わし、本研究課題の1つとして取り組むこととなった。
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Causes of Carryover |
本研究課題の核として据えている「芥川龍之介関連直筆資料」のデータベースの構築作業であるが、そのために必要な入力作業に関わる人件費の支出が、執行されなかったことが主たる要因である。これは、コロナ災禍により調査と分析を行うことに支障が出て、本計画の一部に見直しが迫られたことによる。2023年度は、政府による行動規制の緩和も既に発表されていることから、このことに関する作業の進展が見込まれるものである。
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Research Products
(4 results)