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2023 Fiscal Year Research-status Report

『竹取物語』を中心とした9世紀文学圏における仏教受容の研究

Research Project

Project/Area Number 22K00325
Research InstitutionOtsuma Women's University

Principal Investigator

久保 堅一  大妻女子大学, 文学部, 教授 (30624085)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2025-03-31
Keywords『竹取物語』 / 求婚譚 / 火鼠の皮衣 / 仏舎利 / 典拠 / 構想
Outline of Annual Research Achievements

2023年度は、『竹取物語』難題求婚譚の第三話を対象とし、仏教の受容という観点から調査をおこなった。物語文学が誕生した背景に迫るために、仏教(漢訳仏典、仏教思想)の受容について、『竹取物語』を中心に調査することを目的としている本研究課題にとっては、根幹をなす内容となる。
その成果としては、難題物〝火鼠の皮衣〟や持参した品が燃えてしまう右大臣の話の典拠として、仏舎利(仏の遺骨)の霊験をめぐる話を新たに指摘し、あわせて、その受容の意義や、難題求婚譚の構想についても考察した。
〝火鼠の皮衣〟の典拠については、従来、「火浣布」と見ることが定説となっている。それは間違いないものの、物語中に描かれる〝火鼠の皮衣〟の設定には、仏舎利との共通点や類似点が見られる。特に、天竺出身の僧がもたらした光り輝く物と、それが決して焼けないという性質、そして燃やすことによる真偽の証明という要素を持つものとして、康僧会の〝焼けぬ仏舎利〟の話は右大臣の話とよく重なり、その受容が考えられる。加えて、物が燃えてしまうという結末については、〝焼けぬ仏舎利〟の話と同じ類型を持ち、天竺僧との勝負に敗北した道士たちを語る〝焼けた道経〟の話も摂取されている。右大臣の話は、仏舎利の霊験をめぐる二つの話を重ね合わせて創造されていたと見られる。
仏舎利をめぐる話が受容されていた意義は、右大臣を滑稽な存在として浮かび上がらせ、典拠を通じて読者を楽しませ笑わせることに認められる。また、主要な仏典には、如意宝珠を介して仏舎利と龍の所持する珠とを繋ぐ回路を見出すことができる。この点を踏まえれば、第三話の〝火鼠の皮衣〟と第四話の〝龍のくびの珠〟とは典拠のレベルで関連しており、両話は一連の構想のもとに形成された可能性が高いと考えられる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

『竹取物語』における仏教受容について調査し、新たな典拠の指摘という一定の成果を得られたことは、本研究課題の根幹をなす研究が進められたこととして評価できると考えられる。
また、昨年度に立てた研究の推進方策をある程度進展させられたので、その点からも「おおむね順調に進展している。」とした。

Strategy for Future Research Activity

引き続き、『竹取物語』における仏教知識・仏教思想の受容の調査を中心に進めてゆく。今年度と同様に、さりげない設定や、語、表現などに特に細心の注意を払いながら、仏教的な背景について調査する予定である。
可能であれば、『竹取物語』と同時代のテクストと考えられる『新撰万葉集』や『菅家文草』を対象とした調査もおこないたい。また、上記の研究ではかばかしい成果が得られないと判断されたときは、物語文学における仏教知識の受容という点で、研究上たいへん重要な作品である『うつほ物語』を視野に入れることも対応策の選択肢に入れておく。

Causes of Carryover

おおむね順調に助成金を使用できたが、高額図書の購入に充てるには不十分な額が次年度使用額として残った。これは次年度に改めて書籍購入費用に充てたい。

  • Research Products

    (1 results)

All 2025

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results)

  • [Journal Article] 焼けずはこそ、真ならめ―『竹取物語』右大臣の話と仏舎利をめぐる話―2025

    • Author(s)
      久保堅一
    • Journal Title

      国語と国文学

      Volume: 102(1) Pages: -

    • Peer Reviewed

URL: 

Published: 2024-12-25  

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