2022 Fiscal Year Research-status Report
Creating Bibliographic Catalogues of Eikichi Hashimoto and Sunao Tokunaga: Toward the Construction of a Foundation for the Study of Proletarian Writers of Labor Origin
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22K00338
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
和田 崇 三重大学, 教育学部, 准教授 (10759624)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 日本近代文学 / 作家研究 / プロレタリア / 社会主義 / 書誌 / 目録 / デジタルアーカイブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度にあたる2022年度は、申請時に作成した「研究目的、研究など」に基づき、[1] 申請者作成の「徳永直著作目録」と「橋本英吉著作目録」の遺漏調査、[2] 収集文献のスキャニングとPDF化、[3] 目録の校正作業の3点を実施することを目標とした。 [1] および [3] について、特に「徳永直著作目録」の遺漏調査と校正を中心に行い、これまで情報を得ていたけれども未確認であった文献の調査をし、書誌情報を補完した。結果、浦西和彦編『人物書誌大系1 徳永直』(日外アソシエーツ 1982年)から300件以上の文献情報の増補を達成した。この成果は、2023年刊行予定の拙著『徳永直の創作と理論』(論創社)に「徳永直著作目録」として収録する。 [2] について、収集した徳永直と橋本英吉の著作のスキャニングを、申請者の研究室に所属する学生を雇用して行った。結果、徳永の著作35冊、橋本の著作21冊のスキャニングを完了した。ただし、当初は雑誌記事等についてもスキャニングを予定していたが、予算希望や作業時間を考慮し、当年度には行わないことにした。また、PDF化については、当年度に行うことができなかったため、次年度に繰り越す。 また、本研究と関わる研究成果として、「徳永直『妻よねむれ』の時空間 : 語りと回想/東京と登米」を『社会文学』56号(2022年8月、査読誌依頼原稿、ただし投稿時は本助成の取得前につき謝辞は未記載)に、"Anti-Bourgeois Media in the Japanese Proletarian Literary Movement"を Humanities Vo.11 No.6 (Dec. 2022、査読有り、謝辞記載)にそれぞれ発表した。 以上のとおり、概ね研究は順調であるが、スキャンデータのPDF化が未完了であることなど、計画より少し遅れている点もある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当年度の研究は、当初の計画をある程度達成できた一方で、スキャンデータのPDF化が未完了である点など、計画より少し遅れている点もある。ただし、大幅に遅れてはおらず、次年度に修正可能な範囲であるため、上記を選択した。 研究どおりに進んでいる点と十分に進んでいない点の概要は、「研究実績の概要」に記載のとおりである。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の研究計画で記載したとおり、2023年度は、前年度に収集してスキャニングした文献を、研究資源として活用するためにWebサイトで公開することを目指す。その際、他の作家との共著書や挿絵など、他の著作権に抵触する箇所はトリミング加工し、徳永直と橋本英吉の著作部分のみが表示されるように編集する。また、前年度に完了できなかったPDF化も合わせて行う。 徳永の著作物は、申請者が管理者を務める「徳永直の会」のWebサイト上で公開をし、橋本の著作物は、著作権継承者の正式な許諾を受けたうえで、「(仮)橋本英吉研究」のWebサイトを新たに新設して公開をする。 また、こうしたデジタルアーカイブ化の状況と呼応して、徳永直と橋本英吉に共通する「労働と文学」というテーマを軸とした共同研究を展開したい。ただし、「労働と文学」というテーマがやや狭いため、既存の研究会やプロジェクトとの連動も視野に入れる。 さらに、徳永直の著作については、申請者によるこれまでの研究で戦前期のドイツを中心とした国際的な受容実態を明らかにしてきたが、戦後に冷戦下の東ヨーロッパ各国へ伝播していたことも見逃せない。デジタルアーカイブ化と並行して徳永の翻訳書誌も整理し、近年盛んとなっている社会主義文学の国際的な受容や相互伝播に関する研究にも本研究成果を位置づけることを目指したい。
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Causes of Carryover |
〔理由〕初年度配分予算のうち45%の残額が発生した原因は、収集資料のスキャニングを行う学生アルバイトの作業効率を測定し、様子を見たことによるところが大きい。当初は1冊あたりのスキャニング作業に要する時間が長かったため、予算オーバーを考慮して慎重に進めたが、慣れてくると作業効率も上がり、賃金としての執行率が低いままで、めぼしい著作のスキャニングがほぼ完了した。また、こうした作業効率に関する慎重な予測に伴い、文献収集の候補に上がっていた貴重資料の購入を保留にしていたことも影響している。 〔使用計画〕保留にしていた貴重資料を購入し、追加収集の文献をスキャニングする作業やPDF化に伴う学生アルバイトの賃金に当てる。つまり、本来は初年度に執行する予定であったが、慎重に執行した結果として発生した残額であるため、2023年度の計画を予定通り遂行するためにも、前年度の積み残しの作業費用に当てる。
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Research Products
(4 results)