2022 Fiscal Year Research-status Report
1940年代における児童雑誌の研究ー雑誌メディアにおける児童文学の展開と変容
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22K00345
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
大木 葉子 東北工業大学, 総合教育センター, 准教授 (30802251)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 秀太郎 東北工業大学, 総合教育センター, 教授 (40513065)
河内 聡子 東北工業大学, 総合教育センター, 講師 (20771778)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 『新児童文化』 / 『少国民文化』 / 『週刊少国民』 / 少国民文化協会 / 戦時下の児童文化 / 戦時下の児童雑誌 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度にあたる2022年度は、まず研究対象とする戦時下及び戦後の児童雑誌(『少国民文化』『週刊少国民』)を中心に資料の収集・所在調査・内容確認に関しての研究を進めた。その結果、『週刊少国民』全31冊中23冊、『週刊少国民』全193冊中110冊を収集することができた。また未収集分に関しては、所在場所をすべて確認した上で、8月30日~8月31日に日本近代文学館及び東京大学図書館にて資料調査をし、閲覧可能資料に関しては内容確認・目次複写を実施した。さらに『週刊少国民』との比較対象雑誌として『週刊朝日』の昭和17年5月~12月までの全35冊中32冊、『少年倶楽部』の昭和17年5月~12月の全8冊中7冊(12月号を除く)の資料についても収集が進んでいる。同時に該当雑誌と同時代に発行された児童文学・児童文化等の関係資料に関しての資料収集・目録整理も行い、13冊の同時代資料を収集し、目録を作成中である。 また、資料収集作業と並行して『新児童文化』(第2期)および『こども家の光』(1940年代)の目次をそれぞれ作成し、『新児童文化』(第2期)に関しては『東北工業大学紀要』にて公開した。 また共同研究者3名による小研究会を計4回開催し(2022年4月5日、8月23日、2023年2月16日、3月13日)、それぞれが担当する雑誌(大木『新児童文化』『少国民文学』、高橋『週刊少国民』、河内『こども家の光』)の特徴について報告した上で、今後の研究方針と資料分析の方向性について検討を行い、その方針に基づき、特に比較対象雑誌との差異および児童雑誌としての特徴の確認、それ以前の児童文学との関係性、子ども観の変容と差異に注目し、各自が担当雑誌の調査分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象とする雑誌の収集が順調に進んでいることに加え、2022年度より国立国会図書館デジタルコレクションの個人向けデジタル化資料送信サービスが開始され、未収集分の資料についても概要を調査することが可能となったことにより資料収集においてほぼ計画通りの成果をあげることができた。それに伴い目次の制作も順調に進んでいる。 また、共同研究者間にてこまめに小研究会・ミーティングを実施することによって、それぞれの進捗状況の共有及び今後の調査分析に関しての検討がスムーズに行われており、2023年度以降の研究のビジョンが明確になっている。以上の理由より「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、まずは関係資料の収集を継続し、それぞれの雑誌の全貌を明らかにすることをめざす。加えて各雑誌の具体的な精査を本格化する予定である。まず『新児童文化』『少国民文化』における子ども観と掲載児童文学作品の特質と変化について調査し、戦時下において政府の管理下にあった大人向け啓蒙児童雑誌の特に児童文学分野における特質と内実を明らかにすることを目指す。また散文作品(童話・少年小説等)と詩作品(詩・童謡等)それぞれの戦時下における変遷を確認すると同時に、それぞれの子ども観を明らかにし、同時期に掲載された評論における子ども観との比較を通してそれぞれの特質と実態を明らかにする。また『週刊少国民』に関しては目次の作成を進めるとともに、掲載された児童文学作品と同テーマを扱った一般の文芸作品との比較検討を通して戦時下の子ども向け読物の特質を整理検討することをめざす。具体的には丹羽文雄『海戦』とその少国民版、岩田豊雄『海軍』とその少国民版の比較を予定している。『こども家の光』に関しては、雑誌の内実を精査し、当時の教育状況・農村表象について調査分析することを計画している。 またそれぞれの担当雑誌の調査分析結果を持ち寄り小研究会を開催することを予定している。その際、共同研究者以外の児童文学・一般文学・メディア学の各分野の専門研究者をコメンテーターとして招待し、専門的な見地からのアドバイスを参照しながら考察を深めていきたいと考えている。小研究会は具体的には8月から9月にかけての時期に対面での開催を予定している。
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Causes of Carryover |
令和4年度はCovit-19の影響により入手困難な雑誌を所蔵機関に出向いて調査することに制限が生じたため、次年度への繰り越しが生じた。令和5年度に入りCovit-19の影響に伴う制限も大幅に緩和されたため、まずはこれまでできなかった国内調査の旅費として使用する。また令和4年度内に入手できなかった関係資料の収集を継続する。 加えて8月から9月にかけて予定している小研究会の開催費用(会場費、必要機器購入)、コメンテーターを招へいするに際して必要となる経費(旅費・謝金)に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)