2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K00349
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
高松 亮太 東洋大学, 文学部, 准教授 (20634538)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 和学 / 国学 / 田安宗武 / 賀茂真淵 / 大塚孝綽 / 長野清良 / 上田秋成 / 石川淳 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度に当たる2022年度は、本研究全体の基礎固めを行うことを目的とし、資料調査や複写、年譜作りなどを中心に研究を進めた。具体的には、国文学研究資料館寄託の田藩文庫資料を軸に、田安家における宗武の遺著の編纂事業を中心とした侍臣たちの活動について、時系列を追う形で整理した。国文学資料館の新日本古典籍総合データベース(国書データベース)の恩恵に与り、画像を利用しつつ、必要に応じて原本調査を交えながら進め、所在が遠方の資料に関しては複写も行った。その際『田藩文庫目録と研究』も適宜参照した。こうした作業により、編纂事業の目的や実態、そこに携わっていた大塚孝綽や長野清良、狛諸成といった田安家侍臣らの伝記的な事柄についても、新たに把握することができた。これらの基礎固めをもとに、翌年度以降に成果として発表していく予定である。 また、宗武に仕えた賀茂真淵や宗武に高い関心を示していた上田秋成らの学問的活動や宗武との関連についても調査を進め、一定の成果をあげることもできた。具体的には、真淵の著作における宗武説の反映、秋成における宗武や真淵の影響、真淵流の和学を学んだ秋成の思想などである。さらに、無頼派の作家の一人に数えられる石川淳の小説に、真淵の和学やその影響を受けた秋成の歴史観を踏まえた記述が認められることを明らかにし、その成果を論文として発表した。 なお、こうした本研究の成果の一部を、賀茂真淵記念館における公開講座(記念館アカデミー)「賀茂真淵の手紙を読むⅠ」で一般に広く公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年譜の入力作業は順調に進んでいるものの、いくつか出張を中止せざるを得ない状況にもなり、それに伴い予定していた複写・撮影作業が完了できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き入力作業を続けるとともに、より多くの所蔵機関への調査を重ね、複写や撮影を行ったうえで、以前に調査した関連資料や収集した資料の分析もあわせながら、田安宗武とその文化圏の活動の実態や、侍臣らの伝記的事実を明らかにしていく。また、関連資料の収集も続けていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響によりいくつかの出張調査を中止したこと、また私事ながら、2022年10月に子どもが生まれたため、予定していた出張調査を延期せざるを得なかった。そのため、出張費とそれに伴う複写費を予定通り消費できなかった。 翌年度以降は、延期した出張や複写、また遠隔複写などにあてるとともに、資料の収集にもつとめたい。
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Remarks |
賀茂真淵記念館の2022年度記念館アカデミー「賀茂真淵の手紙を読むⅠ」(全3回)において研究成果を社会に還元した。
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