2023 Fiscal Year Research-status Report
楽書よりみる寺院における儀式催行の実態ならびに芸能の継承と書物生成に関する研究
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22K00355
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
中原 香苗 神戸学院大学, 全学教育推進機構, 講師 (80469270)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 楽書 / 日本音楽史 / 講式 / 金剛寺 / 順次往生講式 / 真源 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、大阪府河内長野市の金剛寺蔵『諸打物譜』に引用される「順次往生楽次第(以下、「楽次第」)」について検討を加えた。『諸打物譜』は、室町時代の金剛寺学頭であった禅恵によって書写されたものである。そこに引かれる「楽次第」は、平安時代末期成立の天台僧真源によるとされる『順次往生講式(以下、『順次講式』)』と関わるものである。本講式は、講式本文に加え、雅楽や催馬楽曲に極楽希求の思いを述べる歌詞を付した楽曲が演奏される、講式作品中でも特異なものである。 「楽次第」はこのうち、『順次講式』の楽部分と密接に関わる。「楽次第」は、『順次講式』の楽部分を中心にした次第と、演奏される楽曲の由来を文献によって記したものである。両者を比較し、「楽次第」は、おおむね『順次講式』に拠りつつも、現存本には見えない識語や、講式内で奏される楽曲が記されていることを指摘した。これらを分析し、この識語および楽曲の歌詞は、真源自身の手になるものと推定した。これまで『順次講式』の作者は、鎌倉時代の『浄土依憑経律論章疏目録』に「順次往生講式 真源」とされることから真源作とされてきたが、「楽次第」の識語の存在により、本講式が真源作であることがほぼ確実となった。また他資料によって存在が推定されていた楽曲「慶雲楽」が、もともと『順次講式』に存したことが明らかになった。 本研究により、『順次講式』が真源の作であることが推定され、また現存の『順次講式』は、ほぼ完成に近い形ながら、そこに楽曲を付加するなど、真源自身の手によってさらに推敲を加えられていたことが示された。本研究は、『順次講式』の研究に資するのみならず、講式という法会にかかわる作品の生成過程および享受を垣間見せた点、重要な価値を有するといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、金剛寺所蔵資料についての調査を継続しており、資料についての論文発表も行い、資料のデジタル化も順次進めているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、資料調査を行い、関係資料を収集、調査し、成果の発表に努める。
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Causes of Carryover |
論文執筆のために資料調査に行く予定であったが、当該資料は、調査を予定していた資料所蔵機関で新規に受け入れたものであったので、先方での資料公開、閲覧のための準備が今年度中には整わず、調査を行うことができなかった。そのため、出張調査のための旅費が次年度に繰り越しとなった。 次年度は、資料公開、閲覧準備が整い次第、調査を行う予定である。また、金剛寺所蔵資料、ならびに狛氏関係資料についても必要な調査を行うとともに成果の発表に努め、引き続き資料のデジタル化も進めていく予定である。
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Remarks |
書評:中原 香苗「磯水絵著『文学と歴史と音楽と』」『説話文学研究』59、2024年6月発行予定。
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Research Products
(1 results)