2022 Fiscal Year Research-status Report
新出韋応物墓誌に基づく中唐詩人韋応物の考察と唐代詞臣の文学に関する研究
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22K00368
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
土谷 彰男 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (10434242)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 韋応物 / 新出墓誌 / 江州 / 古今紀要 / 貞元 / 節度観察史 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)本研究課題に係る基礎資料として、南宋・黄震『古今紀要』十九巻のうち、巻十一~十四の四巻に見える、盛中晩唐にわたる人名について、これを索引として整理し公表した(『中唐文学会報』29)。これと併せて、巻十一(玄宗・肅宗)の記事本文について、これを校訂したうえで公表した(researchmap資料公開)。このなかで、本巻が『新唐書』から出るものであること、本文割注の記述により司馬光『資治通鑑』や朱熹『通鑑綱目』と関連する可能性のあるものであることを指摘した。 (2)本研究課題に係る論考として、新出墓誌に見える記事のうち、おもに江州刺史に関連する治績について考察し、これを「韋応物の{ジョ}江二州における治績に関する一考察(下)」(『中国詩文論叢』41)として論文を発表した。このなかで、当時の江西観察使であった李兼とその「月進」(月々の進奉)を明らかにするとともに、貞元初年の蝗旱による米価騰貴とそれに伴う天子の「減膳」(節食)を通じて、朝廷、ならびに節度観察使及び刺史との間の関連を明らかにし、墓誌に見える「明詔」及び「是非之訟」の内容を検討した。また、穆宗のとき江州刺史であった李渤の伝に「貞元二年、逃戸の欠する所 錢四千四百一十貫」(『旧唐書』)との記事が見え、これが同じ江州刺史であった韋応物のときのものであることを明らかにし、当時の状況を断片的ながら克明に記録したものであることを指摘した。そのうえで、墓誌に見える「州疏端切」の内容について、これが当時にあって逃戸逋亡がすでに累年の政治問題としてあって、その処置に当たることを訴えたものであることを考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進捗状況とその方向性については、基礎資料の整理ならびに墓誌の検討を通じて、本研究課題に対して多角的に調査することの必要性が示され、これによって具体的な考察を可能ならならしめたと考える。すなわち、基礎資料の整理においては関連する記事の比較検討を容易にし、今後の研究の進展において十分足がかりとなりうるものであること、またそのため、墓誌の検討においては、その極めて簡略な記述を検討すべく、その背後をなす当時の社会の動向を立体的に把握するすることにより、当時の韋応物の個人像が如何なるものであったのかを明らかにすると同時に、この人物が如何なる立場にあったのか確かめられるところとなったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、詞臣としてその営為を今後にわたってさらに検討を進めるにあたって、人物の周辺について引き続き具体的な考察を要するものであると考える。そのため、唐代詞臣の群像についてその輪郭をさらに明瞭にすべく、大暦・貞元から元和にかけての社会の動向と時代の潮流についてこれを確実に把握することに努めたい。その基点として本研究課題に係る墓誌の検討を進めることの優位性において、次年度以降はより俯瞰的・総合的な見地に立って考察を進めると同時に、韋応物研究にあってはの作品の解釈と関連付けを強めることにより、新たな知見を示していきたい。
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