2022 Fiscal Year Research-status Report
Rethinking American Southern Literature through Food
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22K00495
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
田中 有美 日本女子大学, 人間社会学部, 准教授 (90599763)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 南部文学 / Edna Lewis / Richard Wright / Carson McCullers / William Faulkner / Food writing / America Eats / 食 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、本研究の中心的な研究対象であるEdna Lewisが執筆したエッセイ”What is Southern?”と、その中で言及されている文学作品の考察し、その考察結果の公表に従事した。その成果は、「『食』から読み直すアメリカ南部文学:エドナ・ルイスの『南部的とは何か?』とライト,マッカラーズ,フォークナーの食表象」という論文として、『日本女子大学大学院人間社会研究科紀要 第29号』(2023年3月発行、15~28頁、査読あり)として発表した。 ルイスのエッセイで「南部的な」文学作品として具体的に言及されているものの中から、Richard Wrightの短編"Bright and Morning Star" (1938) 、 Carson McCullersのThe Member of the Wedding (1946)、William FaulknerのIntruder in the Dust (1948)に注目した。この三作品が執筆された1930、40 年代は,連邦作家プロジェクトのひとつで、未完に終わったAmerica Eatsプロジェクトが進行していた。それは、作家たちがアメリカの各地域に根ざす食文化についての記事を蓄積したものであったが、そこでは、食文化の人種横断的な側面には触れず,あくまでも「地域」という枠組を強調した食の記述スタイルが構築されつつあった。それとは対照的に、Lewisが「南部的」と呼んだ上記3作品には、黒人女性がつくった料理が肌の色の違いを越えて共有される場面を含んでいるという共通点があることを示しつつ、Lewisが「南部的」と呼んだのは、人種の違いを越えて共有される食のあり方であった可能性を指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、Edna Lewisの"What is Southern?"というエッセイが示唆する南部文学と食の密接な関係を具体的に考察するというプロジェクトに取り組む計画を立てており、それを予定通りに遂行し、一本の論文にして世に問うことができた。具体的には、Lewisにとって、文学における「南部性」を意味するものを特定し、ひとつの解釈を示すことができた。さらに南部文学と食の緊密な関係を、社会的文脈と具体的な作品の記述から考察することで、南部文学における食の表象の重要性を明示することができた。食という切り口から南部文学史を再構築するという試みのよいスタートとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
9月からサバティカルに入るため、予定通り、南部の食文化を考える上で重要な幾つかのプランテーションの現地調査を実施する予定である。その前に、2022年度の取り組みでは扱わなかったもののLewisが南部的として挙げている文学作品で、食という切り口から理解を深められそうな作品があったので、その作品についての考察を形にすることを検討している。その後、秋からプランテーションの現地調査に着手できると、より精緻な研究になるのではないかと考えている。
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Causes of Carryover |
2023年度にバイアウト制度を利用することで本研究に充当する時間をより多く確保することにしたため、2022年度は物品などの購入を見送り、2023年度に使用できるようにした。また、現在、円安及び航空券高騰のため、2023年度に予定しているアメリカでのフィールドワークにかかる費用が予定していた金額よりも大幅に増えることが予想されるため、2022年度の支出を極力抑制した。
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Research Products
(1 results)