2023 Fiscal Year Research-status Report
Rethinking American Southern Literature through Food
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22K00495
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
田中 有美 日本女子大学, 国際文化学部, 准教授 (90599763)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | アメリカ南部 / 食 / エドナ・ルイス / ソウル・フード / 南部文学 / 南部料理 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画通り、2023年度はアメリカのヴァージニア州で南部の食文化を考える上で重要なプランテーションの現地調査と料理本の収集を遂行することができた。 プランテーション所有者の食生活がいかに黒人料理人によって支えられてきたかを再認識できるような資料や展示が多く、明らかにアメリカ南部の食文化を新たな視点で読み解こうとする気運があり、本プロジェクトの趣旨と共鳴していることが理解できた。 料理本資料の収集については、研修先であったペンシルヴァニア州立大学では食関係のデータベースにアクセス可能であり、また、図書館には入手しにくい資料も所蔵されていたため、様々な資料を入手することができた。 こうした現地で入手できた資料や経験、そして、本プロジェクトの核が黒人料理人であるエドナ・ルイスであることを鑑み、「南部」という枠組に加え、人種、特に、黒人料理人によって支えられてきた食の伝統にもっと焦点を当てる必要性があると判断した。よって、南部から北部の都市へ移動した黒人コミュニティの料理である「ソウル・フード」という概念の重要性を再認識するに至り、ニューヨークのシェーンバーグ黒人文化研究センターでも調査を実施した。司書の方に助言をいただきながら、ルイスがニューヨークのハーレムに開業したとされる南部料理のレストランの情報を探したが見つけることができなかった。しかしながら、共産党系の新聞にルイスが投稿した手紙が取り上げられている記事を発見し、その論旨がこのプロジェクトで明らかにしようとしているルイスの食に対するヴィジョンと一致するものであったので、今執筆の中のルイスについての論文にその資料を組み込みたいと考えている。 総じて、新しい切り口を発見でき、多くの資料を入手閲覧できたことから、プロジェクトの遂行という面では実り多い一年となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画としては、2023年度はアメリカ現地でのフィールド・ワークと資料収集に専念する年という位置づけであり、それは着実に遂行することができた。しかしながら、現地で強く感じた黒人料理人のアメリカ食文化発展への貢献を再認識していくという論調と、本プロジェクトが非常に共鳴する部分があるということもあり、黒人コミュニティ関係する食文化の資料ばかりを集め、その枠に入らないものまでになかなか手が回らず、収集した資料にやや偏りがあったかもしれないと考えている。現時点では、人種の枠組だけでなく、南部という地域的枠組とその多様性も尊重した研究をしたいと考えているため、方向性を変えるか、従来の方向性で行くか再度考える必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、アメリカの出版社に企画がアクセプトされた共著の本に、本来計画では2025年度に執筆する予定であったルイスとソウル・フードの言説に関する章を寄稿することになっているため、少し先取りすることになるが、今年度はこの論文を早々に完成させることとしたい。 その論文の完成後は、予定通り、ルイスと他の料理人たちの料理本の比較、そして、南部作家たちの文学テクストにおける食の表象を比較する章に着手し、できれば完成させたいと考えている。そのためには、もう少し幅広い資料収集やフィールドワークを再度今年度に実施する必要性があるかもしれないと考えている。 さらに、研修先での研究者との交流から、今日の南部における食の表象をもっとグローバルな視点からアプローチする必要性も感じた。場合によっては、今、第一線で活躍する南部の料理人たちや、文学作品や音楽、ドキュメンタリーなどにおける食の表象を分析した論文の執筆も視野に入れるべきかと考えている。
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Causes of Carryover |
2023年度後期はアメリカに拠点を移してのフィールド・ワーク主体の研究活動であったが、円安の関係で交通費や施設の入館料、資料の購入費が高騰したため、予算が枯渇してフィールド・ワークを中断することにならないように追加申請をした分がこの差額となっている。引き続きまだ円安が続いているので、アメリカへの出張調査や学会参加のための費用や資料購入費用が想定したよりも高くなることが予想されるため、この差額を使って本来の予定通り対応が可能になると考える。
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Research Products
(1 results)