2023 Fiscal Year Research-status Report
The Influence of English "Anti-Modern" Utopian Literature on the 19th and early 20th century Japan
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22K00497
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
清川 祥恵 佛教大学, 文学部, 講師 (50709871)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 原民喜 / ユートピア / 英文学 / モダニズム / 神話 |
Outline of Annual Research Achievements |
原民喜の「新しい人間」観を中心に、近代以降の総力戦による文明の破局にともなう「人間性」への絶望と、そこから再度立ち現れる希望の「神話」について、 ①西洋思想の影響 ②民喜の個人的関心との接続(夢と幻というロマン主義的モティーフ、死について=ある種の伝統的「魔術」的関心) ③社会情勢の反映による科学の魔術化 の3つの視角から再考した。 成果としては、2023年8月にラスクロガンビジターセンター(アイルランド)で開催された国際学会・International Association for Comparative Mythology 第16回年次大会にて、 The Sky Has Fallen: Tamiki Hara's View of Mythological Human History として口頭発表を行なった。また、その内容を発展させた論考「崩れ堕つ天地のまなか--原民喜の幻視における魔術的現実」を2023年中に寄稿した論集『(仮)文学と魔術の饗宴』(斎藤英喜編、小鳥遊書房)は、諸事情により年度をまたいで編集作業がつづいており、2024年度の刊行が予定されている。 11月には日本T. S. エリオット協会主催・第35回大会 シンポジウム「エリオットについて、知れば知るほどいいことだ」に登壇し、パネル発表「『荒地』を眺める--T. S. Eliot が描く神話世界」を行い、19世紀から20世紀への転換期におけるユートピア英文学の系譜について検討した。これは、のちの民喜への影響の解明にも資するものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学会発表の都合上、当初計画からは一部順序を入れ替えて進めた部分があるが、全体としては順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ひきつづき、日本文学における西欧近代文学の受容を、近代において喫緊のものとなった「人間性とは何か」という問いの輸入として把握し、特定の社会思想への限定的な影響ではなく、文学全体への影響の実相を明らかにしていく。西欧ユートピア思想の日本での展開例を検討し、その独自性を解明することで、文化論のみならず比較文学の観点にも資することができる。
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Causes of Carryover |
為替レートの影響を受けて海外渡航費の支出が膨らみ、慎重に執行した結果、わずかに使用額を繰り越すことになった。次年度もひきつづき、社会情勢を注視しつつ、計画的に執行を行う。
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Research Products
(2 results)