2023 Fiscal Year Research-status Report
Studies on the intellectual milieu of Antoine Galland and his creative contribution to the Arabian Nights
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22K00500
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
西尾 哲夫 国立民族学博物館, その他部局等, 名誉教授 (90221473)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | アラビアンナイト / アラブ文学 / 中東地域研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、世界文学アラビアンナイトの原点である『ガラン版千一夜物語』の成立において、翻訳者としてしかみなされてこなかったアントワーヌ・ガランが、どのような素材をどのように加工してテクストを作者として創作していったのかを分析し、さらにその創作過程の背景にあるガランの知的環境が創作意図やテーマ設定にどのように作用したかを分析するために、以下の研究項目を実施した。 昨年度に引き続き世界文学として影響の大きいシンドバード航海記を、上記の研究分析の具体的な対象として取り上げて分析をおこなった。これまでの研究で新たに発見したシンドバード航海記の写本による校訂本(すでに成果として刊行済み)をもとに、日本語訳と注釈による分析作業をおこなうことで(「ペティス・ド・ラ・クロワ版『シンドバード航海記』より第二航海の翻訳と注解」『国立民族学博物館研究報告』に掲載予定)、ガランが利用した底本の確定作業の比較資料となるだけでなく、インド洋海域世界におけるアラブ世界との関係に関する資料を提供することができた。 また研究の第二段階にあたる作業に着手し、個人的価値観が明示的に表れている日記や旅行記等の分析によって、物語の根源的テーマ変容に作用したガランの価値観を明らかにし、物語拡張への影響を分析する作業をおこなった。具体的には、近年になってガランが遺した日記や手紙、旅行記、報告書、さらには未刊行の著作が次々と発見されており、それらの資料を読み解くことで、当時の知的環境、社会状況、国際関係のなかで、ガランがいかに自分の世界観や価値観を織り交ぜながら、訳者というよりはむしろ作者として、『千一夜物語』という作品を創りあげていったかを明らかにする作業をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
具体的な研究成果として、「ペティス・ド・ラ・クロワ版『シンドバード航海記』より第二航海の翻訳と注解」を『国立民族学博物館研究報告』に投稿した。本研究成果は、ガラン版シンドバードとはまったく異なる系統に属する物語として新たに発見したシンドバード航海記の写本による校訂本の日本語訳と注釈をすることで、インド洋海域世界におけるアラブ世界との関係に関する貴重な資料を提供することができる。 またガランの生涯に関する研究を『図書』に連載した。その中で、ガランの活動が、広域的な学術潮流の中にあったことを示した。当時、地中海を挟んで対岸にある中東地域、特にトルコではオスマン帝国の支配下に入ったアラブ世界で継承されてきた、アラブ・イスラームの古典の学問伝統を総合化していく知的作業が活発におこなわれていた。ハーッジ・ハリーファの事典はその精髄だった。逆に地中海を挟んでヨーロッパ側、特にフランスでは中東の地政学的情報の収集に熱心で、当該地域に係る知の伝統を総合化する知的作業が活発になっていた。さらにヨーロッパ全体では《文芸共和国》とよばれるほどに学者間の交流の場が活況を呈していた。ガランは、トルコ、フランス、そしてヨーロッパ全体で創り出されていた三つの超域的な知的ネットワークの結節点にいて、その知的環境が彼の知性を育んだことが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、研究の第一段階にあたる作業として、物語を翻訳の底本や素材がどの程度確定しているかによって三グループに分け、確定済みの第1グループに対しては物語加工のタイプを整理する。未確定の第2グループに対しては準備研究で選定した写本の文献言語学的分析で素材テクストを確定させ、整理済み物語加工タイプと比較してタイプを修正する作業を継続するとともに、第3グループのアリババのようにガランの日記に素材民話の梗概のみが残されている物語に対しては、物語加工タイプの修正に加え、ガラン版に不採択だった素材民話との比較を通して、ガランがアラビアンナイトにどのような物語がふさわしいと考えていたかを分析する。 これらの研究段階を終えたあとは、次の第二段階の研究として、個人的価値観が明示的に表れている日記や旅行記等の分析によって、物語の根源的テーマ変容に作用したガランの価値観を明らかにし、物語拡張への影響を分析する作業をおこなう。具体的には、近年になってガランが遺した日記や手紙、旅行記、報告書、さらには未刊行の著作が次々と発見されており、それらの資料を読み解くことで、当時の知的環境、社会状況、国際関係のなかで、ガランがいかに自分の世界観や価値観を織り交ぜながら、訳者というよりはむしろ作者として、『千一夜物語』という作品を創りあげていったかを明らかにする作業第一段階で得られた外形的物語加工タイプを、物語情報学的研究で得られた物語拡張の三層構造に係る理論的作業仮設に従って、物語の根源的テーマ変容に作用したガランの価値観を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
ガランが遺した日記や手紙、旅行記、報告書、さらには未刊行の著作が次々と発見されており、それらの資料を読み解く作業を集中しておこなった結果、海外調査についてはエジプトでの情勢が不安定なこともあり、翌年度に延期した。
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Research Products
(10 results)